阿佐海岸鉄道は5月28日、四国運輸局長に旅客運賃の上限設定・上限変更の認可を申請した。鉄道線路と道路の両方を走れるデュアル・モード・ビークル(DMV)の導入に先立つもので、この申請は鉄道区間の旅客運賃の上限を定めるものになる。
旅客運賃の上限設定・上限変更が行われる区間は、阿波海南信号場から海部駅、宍喰駅を経て甲浦信号場までの10.0km。阿波海南(信号場)~海部間はJR四国が運営していた区間を引き継ぐため、新たに上限運賃を設定し、海部~甲浦(信号場)間は阿佐海岸鉄道が従来から運営している区間の上限運賃を変更する。
四国運輸局によると、阿波海南信号場と甲浦信号場は鉄道線路と道路の接続地点(モードインターチェンジ)。阿佐海岸鉄道の阿波海南駅と甲浦駅は、モードインターチェンジの道路側(線路の外)にDMV乗り場として設けられる。このため、両駅とも今回の申請区間からは外れる。
申請によると、改定率は平均71.7%。初乗り運賃は従来3kmまで210円のところを5kmまで200円とする。5kmを超え10kmまでは1kmを超すごとに85円を加算する。
阿波海南信号場~甲浦信号場間(10.0km)の上限は700円。海部~宍喰間(6.1km)の上限は400円だ。JR四国が阿波海南~海部間を運営していた時点の運賃を比べた場合、阿波海南~甲浦間は250円高い。海部~宍喰間もいまより150円高くなる。
実際に適用される運賃(実行運賃)は、上限運賃の認可後に阿佐海岸鉄道が上限の範囲内で届け出る予定だ。
阿佐海岸鉄道は従来、阿佐東線の海部~甲浦間(徳島県・高知県)8.5kmを運営。海部駅でJR四国の牟岐線と接続していた。DMVの導入計画に伴い、阿佐海岸鉄道が牟岐線の末端部(阿波海南~海部間)をJR四国から引き継いで阿波海南~海部~甲浦間を一体的に運営し、阿波海南駅と甲浦駅の両側で道路に乗り入れることになった。
これに伴い、JR四国は阿波海南~海部間の第1種鉄道事業を昨年2020年10月31日付けで廃止。四国運輸局によると、阿佐海岸鉄道は同年8月11日に同区間の第1種鉄道事業許可を申請し、同年10月23日付けで同区間の第1種鉄道事業許可を受けた。現在はDMVの導入工事などに伴い、阿波海南~甲浦間で代行バスが運行されている。DMVの導入は今年2021年夏頃になる予定だ。
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