JR東日本は4月21日、高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)周辺にある車両基地・旧線跡地の再開発エリア「品川開発プロジェクト」内で出土した「高輪築堤」について、一部を現地で保存する方針を発表した。
現地保存は2カ所。橋りょう部を含む約80m(3街区)と公園隣接部の約40m(2街区)を保存する。また、信号機の土台部分を含む約30m(4街区)は移築して保存する。
橋りょう部は建設当時の風景をそのまま感じられるよう現地で保存して公開する方針。公園隣接部は文化の発信拠点である文化創造施設と一体的に公開し、築堤を身近に感じられるようにするという。信号機土台部は高輪ゲートウェイ駅前の国道15号沿いの広場に移築することを基本に検討と調査を進める。
これ以外の遺構は、地中に埋めたまま現地保存できる範囲を除いて撤去されることになるが、JR東日本は港区教育委員会と連携して調査を実施。築堤から取り外した石や杭を計測するほか築堤内部の土層の状況も調査し、その記録を保存する。
高輪築堤は明治初期、1872年に開業した日本初の本格的な鉄道である新橋(現在の汐留地区)~横浜(現在の桜木町)間の鉄道を敷設するため構築された構造物群。のちの車両基地の整備や線路配線の変更で地中に埋まったが、2019年に品川駅の改良工事で高輪築堤の石積みの一部を発見。さらに昨年2020年には、車両基地の縮小で捻出された品川開発プロジェクトのエリア内で高輪築堤の一部が出土した。
これを受け、考古学・鉄道史などの有識者で構成された高輪築堤調査・保存等検討委員会が発足。2020年9月から計7回開催された。JR東日本が一部保存の方針だったのに対し、有識者らは全面保存を要望していたが、JR東日本は一部の現地保存と移築保存の方針を固めた。
JR東日本は「まちづくりの中で、150年前に構築された高輪築堤の価値を次世代に継承することで、地域の歴史価値向上、地域社会への貢献とともに新しいまちの価値向上を目指します」としている。