和歌山市のLRT構想「具体的に実現可能性の調査」へ 路面電車は半世紀前に廃止



和歌山市は2月15日、来年度2024年度予算案と重点施策の概要を発表した。公共交通関係では和歌山電鉄貴志川線の維持に向けた対策の検討を新規に盛り込んだほか、路面電車タイプの軽量軌道交通(LRT)の導入可能性の検討も引き続き盛り込んだ。

かつて和歌山市内を走っていた南海和歌山軌道線の路面電車。【画像:kimtoru/写真AC】

貴志川線の維持対策の検討には309万9000円を計上。2026年度から2035年度までの10年間で行う利用促進策や利便性向上策などを検討するとともに、安全輸送を確保するために必要な費用の検証などを行う。バス路線維持への支援(2013万5000円)や地域バスへの支援(2662万7000円)も計上した。

和歌山電鉄貴志川線の列車。【撮影:草町義和】

このほか、JR和歌山駅~和歌山城~南海和歌山市駅の3拠点を結ぶエリアで自動運転などの新技術を活用した利便性向上とにぎわい創出を図るため、けやき大通りへの自動運転バスの導入の検討やMaaS導入の検討、LRTの導入可能性の検討を引き続き実施する。

自動運転バスは本年度2023年度にレベル2の実証運行を行っており、2024年度はレベル2での実証運行の拡大を検討。2025年度には一定区間におけるレベル4の実証運行を目指す。また、関西の主要鉄道事業者が共同で構築した「KANSAI MaaS」アプリとの連携について市内の公共交通機関と調整し、2025年に開催される大阪・関西万博との連動や活性化なども検討する。

LRTの導入可能性は、昨年2023年8月に開業したライトライン(宇都宮市)などほかの都市の事例を研究しながら課題の解決など長期的なビジョンで検討する。

和歌山市の尾花正啓市長は記者会見で「宇都宮のLRTを見ても非常に活力が出てきた感じがしている。これまでも(LRTの)検討はしていたが、2024年度は道路の幅や交通量、カーブの具合、車高など具体的に実現可能性の調査をやっていきたい」と話し、検討のレベルを引き上げる考えを示唆した。

宇都宮のLRT「ライトライン」。【撮影:草町義和】

和歌山市を中心とした地域では、かつて南海電鉄が路面電車(和歌山軌道線)を運行していたが、半世紀以上前の1971年に廃止された。和歌山市は2015年ごろから市内公共交通の改善策としてLRTやバス高速輸送システム(BRT)の導入を視野に調査を行っている。

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