都営大江戸線の延伸「事業費1.8倍」も「40年以内に黒字転換」都が検討状況報告



東京都は10月15日、都営大江戸線の延伸構想について現在の検討状況を明らかにした。現時点の試算では、事業費は従来の想定より大幅に増加。一方で採算性は開業から40年以内に累積損益が黒字に転換するとしている。

大江戸線の終点・光が丘駅。【撮影:草町義和】

大江戸線の延伸構想は、終点の光が丘駅(東京都練馬区)からJR武蔵野線の東所沢駅(埼玉県所沢市)まで約12~13km。このうち練馬区内の光が丘~大泉学園町について、東京都は交通局や財務局、都市整備局、建設局で構成される庁内検討プロジェクトチームを2023年3月に設置し、事業化にあたっての課題や解決の方向性などを検討してきた。

検討の前提条件となる整備区間や設置駅は、これまで想定されていたものとほぼ同じ。光が丘~大泉学園町の約4kmとし、都市計画道路の補助第230号線に沿って整備する。補助第230号線は土支田通りとの交差部まで完成済みで、ここから大泉学園通りまで事業中だ。

新たに設ける駅は、土支田・大泉町・大泉学園町の3駅(いずれも仮称)。設置場所は土支田駅が土支田通りの東側、大泉町駅が東京外かく環状道路との交差部西側、大泉学園町駅が大泉学園通りとの交差部東側をそれぞれ予定している。駅間距離は駅勢圏や地形などを考慮。光が丘~土支田が約1.5km、土支田~大泉町が約1.4kmで、大泉町~大泉学園町は約1.1kmとした。

このほか、延伸に伴い車両編成の増加に対応する必要があることから、既存の高松車庫を改修。大泉学園町駅の終端側にも引き上げ線を整備する予定とした。

検討の前提条件とした光が丘~大泉学園町の延伸ルートと駅の予定地。【画像:国土地理院地形図、加工:東京都】

この条件で試算を実施したところ、概算事業費は約1600億円(税抜)。2016年に国の交通政策審議会が示した分析結果(約900億円)の約1.8倍に膨張した。1日あたりの旅客需要は、いまより約6万人増加。費用便益比(B/C)は事業費と社会的・経済的効果が同一になる「1」以上を見込む。

収支採算性は、地下高速鉄道整備事業として国や地方公共団体からの補助金が拠出される場合、開業から40年以内で累積黒字に転換するとした。

東京都によると、この検討では前提条件に基づき収支採算性やB/Cを試算。事業性が低い場合は、駅周辺のまちづくりによる旅客需要の創出やコスト削減など事業性改善の方策案を検討して前提条件を再設定し、改めて事業性の試算を行うということを繰り返し実施した。その結果「一定の条件を仮定した試算で事業性が改善」するという結果になったという。

大江戸線延伸の想定ルート上に設置されていた延伸の早期実現を求める看板(2011年)。【撮影:草町義和】

東京都は今後、沿線のまちづくりなどの具体化を検討。地下高速鉄道整備事業費補助の活用を前提に東京都や練馬区の費用負担割合なども整理する。また、物価高騰などで事業費や負担額が増える場合の対応方針についても整理する考えだ。

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都営大江戸線の延伸(練馬区内):光が丘~大泉学園町(未来鉄道データベース)