九州大手私鉄の西鉄は9月17日、国土交通大臣に鉄道旅客運賃の上限変更認可を申請した。認可された場合、西鉄は来年2026年4月に運賃を改定する。

普通旅客運賃の上限は初乗り(1~3km)が現行170円のところ10円値上げして180円に。それ以外の距離帯も20~100円値上げする。14~17kmの区間は50円値上げの420円で、72~75kmの区間は90円値上げの1140円になる。定期旅客運賃の上限は大人・1カ月の場合、15kmの区間で通勤が2060円値上げの1万5490円。通学は410円値上げの5190円になる。
現行運賃にはバリアフリー施設の整備費に充当する鉄道駅バリアフリー料金(普通旅客運賃で10円、通勤定期旅客運賃で1カ月370円)が加算されているが、今回の運賃改定を機に廃止する。バリアフリー料金加算前の現行運賃と改定後の運賃を比較した場合は15.7%の値上げだが、加算後の現行運賃との比較では12.4%の値上げだ。西鉄は「バリアフリー設備の整備および維持更新につきましては、今後も継続して実施してまいります」としている。

西鉄によると、同社が運営する鉄道の利用者数は1992年度をピークに減少。昨年度2024年度の輸送人員はピーク時の約7割まで減少している。一方で今後は自動列車停止装置(ATS)や変電所などの大規模更新の設備投資が増加する見通し。電気料金の値上げや人材確保のための待遇改善なども重なり、人件費や経費はこれまで以上に増加する見込みだ。このため今後増加する費用の一部を利用者に負担してもらうため運賃改定を申請したという。
西鉄によると、2024年度の鉄道事業収支は収入が236億9300万円、支出が236億4900万円で4400万円の黒字だった。2026~2028年度の3年間平均の推定では、現在の運賃のままなら32億4800万円の赤字だが、運賃を改定した場合は3億3500万円の赤字に改善される見通しという。
消費税率の引き上げやバリアフリー料金の加算によるものを除くと、西鉄が運賃を改定するのは一部距離帯を値上げした実施運賃ベースで2021年3月以来5年ぶり。上限運賃ベースでの本格的な改定は1997年以来29年ぶりになる。
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