小田急電鉄は9月9日、特急ロマンスカーの新型車両の設計に着手したと発表した。2027年4月に小田急小田原線・新宿~小田原が開業100周年を迎えることから、「次の100年」を見据えた車両として開発。2029年3月の運行開始を目指す。
新型ロマンスカーの設計着手は今年2024年9月2日付け。小田急電鉄は「これまでの伝統や歴史、たくさんのお客さまとともに育んできたロマンスカーブランドを継承しながら、国内外のお客さまに一層上質な移動時間を提供できる車両にしていきたい」としている。
内外装のデザインは、子育て支援住宅「ヴェルデ甲佐」(熊本県甲佐町)など集合住宅や住宅を手がけるCOA(コア)一級建築士事務所(東京都)と共同で行う。小田急電鉄は「同社(COA)がこだわる地域とのつながりや、地域特性を大切にする姿勢、利用者を思うからこそ生まれる気遣いある設計実績が、今回のロマンスカー設計をはじめとした当社の理念に通じる」として依頼したとしている。車両の設計は従来のロマンスカーと同じ日本車両が担当する。
COAは「誰もが快適な空間で楽しい時間を過ごすことができ、ワクワクするような経験ができる車両を探求していきたい」「伝統を継承しながら進化を続けてきたロマンスカーに、新しい息吹を吹き込み、多くの人々に愛される車両デザインを目指します」とコメントした。
小田急電鉄によると、新型ロマンスカーは通勤輸送にも対応した30000形電車「EXE」のうちリニューアル車「EXEα」を除く車両の代替。ただし、車両の位置づけとしては観光輸送向けの性格が強い50000形電車「VSE」の後継になるという。
小田急電鉄の広報部は取材に対し「『EXE』の老朽化に伴い新型ロマンスカーを導入するが、(通勤輸送への対応を減らして観光輸送を強化するといった)運用上のイメージがあるわけではない。ただ『VSE』の後継車両を作るんだ、という考え」と回答。「VSE」の後継車両として連接構造や前面展望室を再び採用するかどうかなどについては「いまの段階ではお話できない。これから検討する。今後1年以内に車両の概要を示したい」と話した。
「EXE」は1996年にデビュー。通勤輸送にも対応したロマンスカーとして開発された。従来のロマンスカーはJR線への乗り入れに対応した20000形電車「RSE」を除き、1台の台車で二つの車体をつなぐ連接構造を採用。これに対し「EXE」は一般的な1両2台車を採用した。3100形電車「NSE」などに導入された、運転台越しではない前面展望室も採用していない。
「VSE」は「EXE」デビューから9年後の2005年にデビュー。再び連接構造と前面展望室を採用したほか、連続窓の採用による眺望性の向上を図るなどして観光輸送への対応を強化した。また、車体傾斜装置を導入するなどして乗り心地の向上を図っている。
「VSE」は2022年3月に定期運行を終了。昨年2023年12月には臨時列車などでの運用も終了して引退している。これにより連接構造のロマンスカーは消滅。前面展望室を備えたロマンスカーは現在、2017年にデビューした1両2台車方式の70000形電車「GSE」の2編成だけで、前面展望室の予約が取りにくい状況が続いている。
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