東京~熱海「別線化」東海道新幹線の営業キロ変わる? 折り返しルートの乗車券は?



JR東日本・JR東海の2社は8月1日、鉄道旅客運賃の上限変更認可を国土交通大臣に申請した。JR東日本の運賃が改定されることから、2社の運賃の計算・適用方法を変える。認可された場合、東京~熱海を結ぶ東海道本線と東海道新幹線は営業上も「別線」の扱いになる。

JR東海が運営する東海道新幹線(左)とJR東日本が運営する東海道本線(右)の列車。【撮影:草町義和】

現在、JR東海が運営する東海道新幹線の東京~熱海は営業上、JR東日本が運営する在来線(東海道本線)と同一路線の扱い。運賃・料金算出の基準となる営業上の距離(営業キロ)も実際の距離(実キロ)の95.4kmではなく、それより9.2km長い東海道本線の営業キロ(104.6km)にあわせている。

このため、東京→熱海では東海道本線経由の乗車券で東海道新幹線を利用でき、逆に東海道新幹線経由の乗車券でも東海道本線を利用できる。その一方、東京→(東海道新幹線)→熱海→(東海道本線)→湯河原と移動する場合、営業上は同一路線を折り返す形になるため片道ルートとしては成立せず、乗車券は「東京山手線内→熱海」と「熱海→湯河原」の2枚に分けて購入する必要がある。

現在は東海道本線経由の乗車券で東海道新幹線を利用したり、東海道新幹線経由の乗車券で東海道本線を利用したりすることが可能。【撮影:草町義和、作成:鉄道プレスネット】
東京→(東海道新幹線)→熱海→(東海道本線)→湯河原と移動する場合、現在は乗車券を2枚に分けて購入する必要がある。【作成:鉄道プレスネット】

ただし、並行する在来線から離れた場所にある新幹線の駅を含む区間では、在来線と新幹線を別路線として扱っている。東京~熱海では新横浜駅を含む品川~小田原が該当。東京→(東海道新幹線)→新横浜→(横浜線)→東神奈川→(京浜東北線)→鶴見と移動する場合、1枚の乗車券で利用できる。

今回の申請が認可された場合、東京~熱海は東海道本線と東海道新幹線が「別線」扱いに。東海道本線経由の乗車券で東海道新幹線を利用したり、東海道新幹線経由の乗車券で東海道本線を利用したりすることができなくなる。

ただし、東京→(東海道新幹線)→熱海→(東海道本線)→湯河原は別線化により片道ルートとして成立するため、「東京山手線内→湯河原(東海道新幹線・熱海・東海道本線経由)」の乗車券1枚で利用できるようになる。

別線化により東海道本線経由の乗車券で東海道新幹線を利用したり東海道新幹線経由の乗車券で東海道本線を利用したりすることはできなくなる。【撮影:草町義和、作成:鉄道プレスネット】
別線化されると東京→(東海道新幹線)→熱海→(東海道本線)→湯河原というルートでも1枚の乗車券で利用できるようになる。【作成:鉄道プレスネット】

このほか、別線化に際しては東海道新幹線の営業キロは変更せず、引き続き東海道本線と同一の営業キロを適用する。このため、別線化による東海道新幹線の運賃の値下げや値上げはない。JR東海は鉄道プレスネットの取材に対し「東海道新幹線の営業キロについて当社は国土交通省から認可を受けている。JR東日本の運賃が改定されることに伴って、東海道新幹線の営業キロを変更する認可申請を行う考えはない」と回答した。

JR東日本は昨年2024年12月に運賃改定を申請。今年2025年8月1日に認可された。これまで共通だった2社の幹線・地方交通線の運賃が同じではなくなるため、2社の路線が並行する東京~熱海の扱いが課題に。JR東日本は運賃改定の申請にあわせ、東京~熱海で東海道本線と東海道新幹線の別線化を図ると発表していた。

JR東日本の運賃改定と東京~熱海の別線化は来年2026年3月の予定。JR東海の申請書によると、別線化により同社の収入が増えることはない一方、運賃の計算・適用方法の変更に対応するための機器の改修に3億9700万円かかるという。

※追記(2025年10月3日17時50分)
国土交通省の関東運輸局と中部運輸局はJR東日本・JR東海の申請を2025年9月26日付けで認可した。2026年3月に別線化を実施する予定。

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