沖縄鉄軌道「第三軌条方式」も試算、HSSTは7パターン 内閣府調査



沖縄本島で構想されている「沖縄鉄軌道」について、内閣府は6月30日までに2024年度の調査結果を公表した。今回もすべてのケースで費用便益比(B/C)が「1」を下回った。

第三軌条方式の普通鉄道の例。2本のレールの脇に設置された給電用レールから電気を採り入れており、車両の上方に架線や架線柱がない。【撮影:草町義和】

2024年度の調査では、これまでの調査の成果や現地視察を踏まえつつ、モデルルートや交通システム、駅位置などを精査。さらに最近の物価変動などを踏まえた概算事業費の精査を実施した。

検討パターンは12パターン。機種は「普通鉄道」の3パターンと「高速AGT」の1パターン、「HSST」の7パターン、「第三軌条方式普通鉄道」の1パターンとした。とくに2023年度の調査でB/Cが最大になったHSSTについて、運行形態の見直しなど多数のパターンを検討。普通鉄道は集電方式について架空電車線方式のほか第三軌条方式についても検討を行った。

HSSTは日本航空や名鉄が中心になって開発された常電導磁気浮上式のリニアモーターカー。常設の営業路線では2005年に開業した愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)に導入されている。普通鉄道の第三軌条方式はおもに地下鉄で採用されている集電方式。2本のレールの脇に給電用のレールを設置したもので、架空電車線方式に比べトンネル断面を小さくできる。

2024年度の内閣府調査で設定されたモデルルート。【画像:内閣府】
HSSTが採用されたリニモ。【画像:chapa918/写真AC】

概算事業費が最も安かったのは、HSSTを那覇(旭橋)~名護の65.9kmに整備するケースで5760億円。最も高額になったのは、糸満市役所~名護~沖縄美ら海水族館と空港接続線の合計100.0kmに普通鉄道(架空電車線方式)を整備するケースで1兆1630億円だった。普通鉄道を糸満市役所~名護と空港接続線の合計79.5kmで整備する場合、架空電車線方式は最小で8770億円。第三軌条方式は360億円安い8410億円になった。

2022年度を基準とした1日あたりの需要予測値は、糸満市役所~名護と空港接続線の合計79.5kmを普通鉄道で整備するケースが架空電車線・第三軌条ともに最大の10万8000人。最小はHSSTを那覇(旭橋)~名護(北谷経由)の67.9kmに整備するケースで7万7000人だった。

40年間の累積損益収支は調査した全ケースで赤字とされた。赤字額が最小になったのは、糸満市役所~名護と空港接続線の合計80.2kmを高速AGTで整備するケースの4280億円。最大は普通鉄道(架空電車線方式)を糸満市役所~沖縄美ら海水族館と空港接続線の合計100.0kmに整備するケースで、1兆1640億円だった。

50年間のB/Cも、すべてのケースで事業費と便益が同じになる「1」を下回った。最大はHSSTを那覇(旭橋)~名護の65.9kmに整備するケースの0.83。最小は普通鉄道(架空電車線方式)を糸満市役所~沖縄美ら海水族館と空港接続線の合計100.0kmに整備するケースの0.53だった。

各検討パターンの設定条件と試算結果。【画像:内閣府】

このほか、バス専用車線を設けるなどしてバスを高速運行する「次世代型バス輸送システム」の検討も2ルートで実施した。概算事業費は旭橋・那覇空港~糸満方面のルートが約107億円で1kmあたりでは約8億5000万円、胡屋十字路~泡瀬方面は約78億円で1kmあたり約10億6000万円になった。ただしバス専用車線の設置による車線減少で道路混雑が悪化する可能性があるため、道路混雑を抑制するソフト施策もあわせて実施する必要があるとしている。

沖縄鉄軌道は沖縄本島の那覇~名護などに鉄道新線を整備する構想。沖縄県のほか内閣府が2010年度以降、継続的に調査を実施している。これまでさまざまなコスト縮減策が検討されているがB/Cが「1」以上になったことはなく、事業化が困難な状況が続いている。

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