りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道は7月1日、八潮車両基地で新型車両「71-000形電車」を報道関係者に公開した。りんかい線の開業時から運用されている70-000形電車を順次置き換える。早ければ10月にも営業運行を開始する見込み。

公開されたのは71-000形のZ11編成とZ12編成で、1編成の車両数は70-000形と同じ10両。モーター搭載車6両と非搭載車4両で編成を組む。編成内の車両配置も70-000形に準じており、大崎寄りからTc’(1号車)+M2’(2号車)+M2(3号車)+T1(4号車)+M3’(5号車)+M3(6号車)+T2(7号車)+M1’(8号車)+M1(9号車)+Tc(10号車)になる。八潮車両基地での作業性や検修設備を考慮した配置になっており、りんかい線に乗り入れているJR東日本埼京線のE233系電車7000番台の配置とは異なる。

車体は総合車両製作所(J-TREC)のステンレス車両ブランド「sustina(サスティナ)」のうちS24シリーズを採用。幅は70-000形に比べ150mm拡大して混雑時の圧迫感を緩和する。床の高さは70-000形より50mm低くし、ホームとの段差を縮小した。1両の定員(座席)は中間車が158人(51人)、先頭車が140人(39人)で、1編成では1544人(486人)。
外装は70-000形の3色(ブルー・ホワイト・ターコイズグリーン)を受け継ぎつつ、前面は「イルカの微笑み」をイメージしたデザインで「親しみやすさ」を表現した。側面はエメラルドブルーのグラデーションで「東京湾ウォーターフロントの水辺の空間」を表現している。号車番号や車両番号、車椅子マーク、ベビーカーマークは全体と調和、一体化するようデザインしたという。






内装は「魅力ある都市景観の情景にふさわしい上質感」をコンセプトにデザイン。腰掛はグレーを基調としてレインボーカラーの差し色を入れ、妻壁やつり手はネイビー色を採用した。座席は70-000形と同じロングシートだが、1席あたりの幅を10mm拡大。仕切り板はガラス張りにすることで開放感を演出している。


優先席はモケットをピンク色にして識別性を高めたほか、保護棒を1本追加することで3人掛けのどの席でも利用できるようにした。また、車椅子・ベビーカー利用者向けのフリースペースを全車に配置。介助者やベビーカー利用者向けの2段手すりを設置した。


ドアの上には17.5インチワイド液晶画面の車内案内表示器に加え、ランプ点滅・チャイム音によるドア開閉案内装置を設置した。空調装置の冷房能力は58.14kW。70-000形に比べ2割ほど向上させている。空調装置内には電気ヒーターを搭載して補助暖房・除湿運転も可能とし、きめ細かな温度制御による快適な車内温度を提供するという。防犯カメラは乗務員がリアルタイムに映像を確認できるタイプを全車に設置。非常通話装置は各車に4台搭載した。


モーターは三相かご形誘導電動機で、制御方式は回生ブレーキ付きのVVVFインバーター方式を採用した。パンタグラフは6号車と9号車に1台ずつ搭載し、3号車には2台搭載した。3号車の1台は予備パンタグラフで、常時使用するパンタグラフがすべて損傷しても走行できるようにしている。密着連結器は4号車と7号車の両端で切り離せるよう配置してメンテナンスの柔軟性を考慮した。
台車は軽量ボルスタレス構造で軸箱支持は軸梁式。すべての台車に軸ダンパを取り付けて乗り心地の向上を図った。また、ヨーダンパを追加で取り付けられるよう準備されている。




列車情報管理装置はTIMSを採用。各機器の状況を収集して表示、記録する車両検査機能や、故障の有無などをリアルタイムに運転台表示器に表示するモニタリング機能を備える。







JR東日本は東京都心の3方面から羽田空港に乗り入れる羽田空港アクセス線(仮称)を構想している。このうち東京駅方面から八潮車両基地に隣接する東京貨物ターミナル駅付近に至る「東山手ルート」と、東京貨物ターミナル駅付近から羽田空港新駅(仮称)に至る「アクセス新線」が2031年度の開業を目指して工事中だ。一方、りんかい線の新木場方面から羽田空港に乗り入れる「臨海部ルート」も、りんかい線と八潮車両基地の回送線を活用して整備することが考えられており、JR東日本は東山手ルートとの同時開業を目指している。
JR東日本の目標通りに進めば、6年後には71-000形が羽田空港に乗り入れる可能性も出てくる。一方で東京臨海高速鉄道の関係者は、報道公開時の記者会見で「臨海部ルートは事業費の精査を始めたところで、設備の改良などを検討していく段階。これから走る車両がどうなるかは検討していない」と話した。

りんかい線は1996年、新木場~東京テレポートが開業。これにあわせて70-000形が新造され、当初は4両編成で運用された。その後、2001年の天王洲アイル延伸開業や2002年の大崎延伸開業、埼京線との相互直通運転開始などに伴い順次増備され、1編成の車両数も6両または10両に拡大。2004年までに全編成が10両化された。

相互直通運転が始まったころのJR乗り入れ車は205系電車だったが、2016年までに現在のE233系7000番台への更新が完了している。一方で70-000形はりんかい線の開業時に導入された車両が現在も運用されており、今年2025年3月にデビュー29周年を迎えた。


71-000形は昨年2024年10月、1編成目のZ11編成がJ-TRECの新津事業所で完成。翌11月に搬入された。今年2025年6月までに2編成目のZ12編成も搬入されている。導入は2025年度下期の予定。早ければ10月にも営業運行が始まる見込みだ。
2025年度と2026年度は各3編成を導入。2027年度は2編成を導入して合計80両(10両8編成)とし、70-000形をすべて更新する。70-000形は一部の車両がすでに引退済みでJR九州への譲渡が始まっているが、東京臨海高速鉄道の関係者は「当社の社員は70-000形にとても強い愛情、愛着がある。JR九州に限らず最後まで諦めず、1両でも多く譲渡したい」と話し、JR九州以外への譲渡の可能性も示した。
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