大井川鉄道(静岡県)は7月から8月にかけ、大井川本線で夜行列車「山岳夜行」の復活運行を実施する。昔懐かしい列車を単に復活させるだけでなく、観光地へのアクセス輸送という「実用性」を兼ねた列車としても運行する。

運行日は7月26日と8月2・9・16日の計4日。新金谷駅を21時55分に発車して金谷~家山を往復し、翌朝6時05分に家山駅、6時14分に川根温泉笹間渡駅に到着する。川根温泉笹間渡駅では折り返しの定期列車に継続して乗ることができる。車両はもと近鉄の16000系電車を使用する。
また、家山駅では6時30分発の千頭駅行きバスに乗り継ぎ可能。千頭駅でさらに寸又峡温泉などに向かうバスに乗り継げる。
乗車には大井川鉄道が販売する旅行商品の購入が必要。旅行代金は1万1800~1万9800円(大人・子供同額)で、夜食の弁当と夜泣きそば、大井川本線のフリー乗車票、川根温泉の入浴チケットと朝食が付く。定員は58人。申し込みは6月30日12時以降、大井川鉄道のウェブサイトで受け付ける。
「山岳夜行」は大井川鉄道が1970年代から1980年代にかけ、夏季限定で運行していた登山客向けの夜行列車。東海道本線・東京~大垣の夜行普通列車(通称「大垣夜行」、のちの快速「ムーンライトながら」)に接続し、未明の大井川本線を走った。

大井川鉄道によると、1976年夏の場合は下り「大垣夜行」の金谷着が3時08分。「山岳夜行」は同駅を3時30分に発車して4時24分には千頭駅に到着した。さらに4時40分発の井川線の列車に乗り、井川駅には6時06分着。井川駅からは畑薙第1ダム行きのバスも運行されており、登山客は7時32分には登山を開始することが可能だったという。
大井川本線は2022年に発生した豪雨災害で現在も川根温泉笹間渡~千頭が運休中。静岡県などの支援を受けて2029年春の全線復旧を目指す。復旧費は総額21億円の見込み。このうち3億6000万円を最終的に大井川鉄道が負担する計画だ。大井川鉄道は「山岳夜行」の運行収益の一部を復旧費に充当するとしている。
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