英国の鉄道「再国営化」スタート 民営化から30年、施設・運行の一体管理に移行



英国の旅客鉄道運行事業者「サウスウエスタン鉄道(SWR)」が5月25日、国営に移行した。同国が計画している鉄道の「再国営化」がスタートした。

SWR再国営化の式典で「(再国営化は)重要な転換点になる」と話すハイディ・アレクサンダー運輸大臣。【画像:英国政府】

SWRは英国のロンドンや南東・南西部で旅客列車を運行する事業者。5月25日からは英国運輸省(DfT)が設立したDfTオペレーターが管理する体制に移行した。SWRの列車は再国営化に伴い、かつての英国国鉄のロゴマークと「Great British Railways Coming soon(英国鉄道、近日公開)」の言葉でデザインされたステッカーが貼り付けられた。

今後も英国の旅客鉄道サービスの再国営化が順次進められ、2027年末までに完了する予定。最終的には運賃収入や施設、運行を一体的に管理する国営企業の英国鉄道(GBR)を設立し、GBRが旅客鉄道運行事業者や車両保有事業者に運行料や使用料を支払う形に移行する計画だ。

英国は1948年に鉄道を国有化して公共企業体の英国国鉄が発足したが、1997年に民営化。現在は英国政府の事業者「ネットワーク・レール」が鉄道施設を管理し、複数の鉄道運行事業者が施設を借りて列車を運行する上下分離方式を採用している。

民営化により鉄道の利用者は増えたが、その一方で事業者間の調整不足などによる列車の遅延や運休、運賃の高額化などの問題が生じた。こうしたことから英国は再国営化にかじを切った。

かつての英国国鉄のマークと「英国鉄道、近日公開」の文字が躍るロゴマーク。【画像:英国政府】

英国運輸省は「民営化による約30年にわたる分断と無駄遣いに終止符が打たれる」とアピール。「線路と列車を一体化することで、英国鉄道は運行をよりシームレスにし、鉄道に説明責任と信頼性を取り戻し、遅延や運休の削減に貢献する」としている。

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