広島電鉄の被爆電車653号「原爆投下80年」特別運行 比治山線経由で原爆ドームへ



米軍による広島への原爆投下から今年2025年8月6日で80年を迎える。広島電鉄と中国放送(RCC)は、恒例となった「被爆電車」こと広島電鉄650形電車653号の特別運行を7月に実施。今回は広島県内の小学生を対象にクラス・学年単位で乗車体験者を募集する。

「被爆電車」こと650形の653号。【画像:広島電鉄】

運行日は7月の平日。10時00分発~11時30分ごろ着の午前便と14時00分発~15時30分ごろ着の2便を設定している。実際の日時は乗車体験が決定した学校と相談する。

広島駅で653号に乗車。戦時中、広島駅から兵員輸送の拠点だった宇品港への輸送力強化のため軍の要請で建設した皆実線(旧・比治山線)を走る。皆実町交差点(皆実町六丁目停留場付近)で右折し、広島本社前停留場で下車。千田車庫で「被爆電車」や被爆した建物を見学する。その後、原爆投下の被害が大きかった広島市中心部を経由し、原爆ドーム前停留場で終着になる。

車内では653号の歴史や電車の運行経路上の主要スポットについて、戦前や戦時中、被爆直後の状況を写真や映像で解説する。

乗車体験に申し込みできるのは小学校の校長か教諭など担当者のみ。RCCのウェブサイトで応募を受け付けている。申込期間は6月10日まで。

原爆投下から1カ月が過ぎた1945年9月中旬の八丁堀。爆風で吹き飛ばされ道路上の軌道から外れた電車(右下)が見える。【画像:林重雄】

650形は1942年に651~655号の5両が製造された。1945年8月の原爆投下で被爆したが、1948年までに5両とも復旧している。655号が1967年に事故で廃車になり、2006年には653・654号が引退した。651・652号は現在も運用されている。

現存する650形の3両。653号は1945年当時の塗装を復元した。【撮影:草町義和】

原爆投下から70年を迎えた2015年、653号が1945年当時の塗装に変更して復活。広島電鉄・RCCの共同企画として毎年夏に特別運行を実施している。広島電鉄とRCCは今回の乗車体験者を小学生としたことについて「被爆80年の年である今年も、未来の平和の担い手である子どもたちに、被爆電車を通じて平和を学び、そして伝えてほしいという願いを込めて、特別運行プロジェクトを開催いたします」としている。

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