広島電鉄の広島駅ビル乗り入れ「原爆投下80年の3日前」開業へ 運行系統どう変わる



広島電鉄は4月23日、広島駅の新しい駅ビルに乗り入れる路面電車の新線「駅前大橋ルート」(駅前大橋線)を8月3日に開業すると発表した。広島駅を発着する路面電車の所要時間短縮に加え、JR線と路面電車の乗り継ぎ利便性の向上を図る。

駅前大橋線の開業で広島電鉄の路面電車は各運行系統のルートが変わる。【撮影:草町義和】

駅前大橋線は、広島駅停留場から稲荷町交差点を経て比治山町交差点まで1.1kmを結ぶ新線。広島駅停留場は3月にオープンした広島駅南口駅ビル「minamoa(ミナモア)」の2階に整備された。

駅前大橋線と周辺の路線(赤=新設、青=撤去)。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】

新しい広島駅停留場は乗車ホーム4カ所と降車ホーム2カ所に増強。系統別に乗り場を分離して分かりやすくした。また、JR在来線の改札口と同一階で直結。JR在来線改札口~路面電車乗り場の移動時間は従来の2分24秒から1分10秒に短縮される。

広島電鉄による新しい広島駅停留場の案内図。各系統別の乗車ホームと降車専用ホームを設けている。【画像:広島電鉄】

広島駅停留場からは高架軌道で駅前通りの中央を進み、駅前大橋を渡ったところで駅前通りの路面に軌道を敷設した併用軌道に。稲荷町交差点(稲荷町停留場)で本線の軌道と交差し、松川町交差点付近に松川町停留場を新設する。ここで駅前通りから外れ、比治山町交差点で皆実線に合流。合流後の最初の停留場は比治山下停留場になる。

駅前大橋から稲荷町交差点までの併用軌道区間(2024年3月)。【撮影:草町義和】

駅前大橋線の開業により、現在の広島駅停留場に乗り入れている運行系統(1・2・5・6系統)は駅前大橋線経由に変わり、駅ビル内の新しい広島駅停留場に乗り入れる。これにより1・2・6系統の広島駅~稲荷町の運行距離が短縮。広島駅~八丁堀・紙屋町方面の移動時間が約4分短縮される。5号系統の広島駅~比治山下方面の移動時間も約4分半短縮される。

一方、現在の広島駅~稲荷町・比治山下の区間では1・2・5・6系統の運行が終了。これにより本線の広島駅(現)~的場町は廃止され、本線の的場町~稲荷町と皆実線の的場町~比治山下は休止する。停留場は現在の広島駅停留場が新しい停留場に移転する形になり、猿猴橋町停留場は廃止。的場町停留場と段原一丁目停留場は当面のあいだ営業を休止する。

広島電鉄の現在の運行系統と駅前大橋線(灰色点線)。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】
駅前大橋線開業後の運行系統。広島駅~的場町(灰色点線)は廃止され、的場町~稲荷町・比治山下(灰色)は工事のため休止する。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】
猿猴橋町停留場は駅前大橋線の開業に伴い廃止される。【撮影:草町義和】

その後は休止区間の改良工事を経て、来年2026年春から宇品線・本線・皆実線を通る循環系統の運行を開始する。ルートは広電本社前~紙屋町東~的場町~皆実町六丁目~広電本社前。休止区間と的場町停留場、段原一丁目停留場も循環系統の設定により営業を再開する。広島電鉄は循環系統の設定により広島都心部の回遊性の向上を図るとしている。

2026年春には循環系統の運行が始まり、休止区間の営業を再開する。【画像:国土地理院地形図、加工:鉄道プレスネット】
循環系統が停車する停留場。【画像:広島電鉄】

駅前大橋線は当初、今年2025年春には開業の見込みだったが、工期の精査などにより延期されていた。

広島電鉄は太平洋戦争末期の1945年8月6日、米軍による広島への原爆投下で甚大な被害を受けて全線不通になったが、3日後の8月9日から順次運転を再開した。今年2025年8月6日には原爆投下から80年を迎えるが、駅前大橋線はその3日前に開業し、広島平和記念式典の参加者を同線で輸送することになりそうだ。

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