熊本市電「1割超値上げ」運賃改定を申請 事故続発、乗務員の処遇改善など図る



熊本市交通局は4月17日、国土交通省の九州運輸局長に熊本市電の運賃改定を申請した。認可された場合は6月1日に運賃を改定。平均11.1%値上げする。

熊本市電の路面電車。【画像:東西南北そうだ/写真AC】

普通運賃は現行180円のところ20円値上げの200円に改定。定期運賃は1カ月の場合、通勤が720円値上げの7200円、通学が600円値上げの6000円になる。企画切符類は「市電1日乗車券(紙式)」が200円値上げの700円に。「市電1日乗車券(モバイル式)」(現行500円)や「24時間乗車券(モバイル式)」(現行600円)、「電車バス共通1日乗車券」(現行800~2200円)は現行額を据え置く。

熊本市電はコロナ禍による収入の減少と電気代の高騰などによる支出の増加で収支率が悪化。これに加えて2024年2月以降、脱線や衝突、信号の見落としなど事故・トラブルが続発しており、その背景には退職者の不補充による乗務員不足や安全対策投資不足がある。

交通局によると、これらの対策として乗務員らの処遇改善や老朽化した設備の更新などを実施する考え。しかし現在の収支の状況では対策を講じるのが難しいことから、運賃の改定を申請したという。

各種運賃の改定後の額と現行額の比較。【画像:熊本市交通局】

熊本市電の収支は2023年度の実績で収入が18億2800万円だったのに対し支出は20億1800万円で1億9000万円の赤字。2025~2027年度の3年間合計の推計では、現行運賃のままなら15億2600万円の赤字だが、運賃を改定した場合は赤字額が10億1600万円に抑えられる見込みだ。

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