事故現場に投入された鉄道クレーン車「ソ」【写真でたどる鉄道の歴史】



「操重車」は端的にいえば移動式クレーンの鉄道版といえるもの。台枠のうえにクレーンとクレーンの操縦室を載せている。日本の国鉄・JRの場合、形式記号は「そうじゅうしゃ」の頭文字にちなんで「ソ」としている。

中国の鉄道クレーン車(2011年)。【撮影:草町義和】

一般的なクレーンと同様、建設資材や貨物などの積み下ろしに使用するほか、大規模な事故の発生時には現場に駆けつけ、脱線した車両をつり上げてもとの線路に戻すなどの復旧作業に用いられる。ネット上で検索してみると、名古屋駅で発生した寝台特急「紀伊」の機関車衝突事故(1982年)で復旧作業に投入された操重車の写真を見ることが多い。大都市圏の中心駅で目撃者が多かったためだろう。

日本国鉄のソ20形(1934年)。瀬田川橋梁で発生した列車脱線事故の復旧作業に投入されたときの姿とみられる。【画像:細江正章】

この写真は国鉄ソ20形操重車。東海道本線の瀬田川橋梁(滋賀県)で発生した列車転覆事故(1934年9月21日)で復旧作業に投入されたときの姿とみられる。米国インダストリアル・ブラウンホイスト製の操重車で1928年に1両導入。クレーンの動力源は蒸気機関で、ソ20形も操縦室後方の屋根に大きな煙突の姿がみえる。

戦後の操重車は動力源をディーゼルエンジンに代えたものが導入されているが、遅くとも2001年までに消滅したとみられる。道路整備が進んだことで自動車タイプの移動式クレーンを使ったほうが効率がよくなったためだろうか。ただし保守機械扱いの鉄道クレーン車は現在も存在する。

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