京王電鉄は3月6日、運転士のみ乗務するワンマン運転向けの自動運転設備を搭載した電車を導入すると発表した。3月中旬から実証試験を行う。

自動運転設備を搭載したのは1000系電車の第1778編成。出発制御や駅間走行制御、定位置停止制御(TASC)などの自動運転システムを搭載した。ブレーキ制御機能は従来の7段階から28段階に変更。きめ細かなブレーキ操作を実現して安全性・省エネ性の向上や乗り心地の向上を図る。
第1778編成に搭載した自動運転のシステムは、自動列車制御装置(ATC)の指示速度よりも遅くなるよう自動的に加減速制御を行う。ATCが進行を指示し、ホームドアや車両ドアがすべて閉まるなどの条件を満たしたときに出発ボタンを操作すると、列車が自動的に発車する。
駅間ではATCの指示速度に加え、あらかじめ記憶している走行パターンに従って乗り心地を考慮した自動運転を実施。踏切などでのトラブル発生時でもATCで自動的に停止するほか、運転士による手動ブレーキ操作も受け付けるようにする。また、惰行走行が多くなるようにして省エネ化を目指す。停車駅が近づくとTASCが駅の定位置停止パターンを発生させ、自動的に定位置に停車する。
このほか、車内トラブル発生時に乗務員の操作で最寄駅に強制的・自動的に定位置停車させる通過駅強制停車ボタンを導入。この機能を使用すると、車内案内装置にも「近くの駅に停車します」という案内が自動的に表示される。


これ以外にもデザインの変更などを行った。井の頭線のホームドア整備に伴い、車椅子ステッカーなどのピクトグラムや車両番号が見えやすくなるよう上部に移設。アクセントラインとシンボルマークを追加して、自動運転車両とそれ以外の車両を区別できるようにした。デザインは京王電鉄の若手社員が考案したものといい、シンボルマークは井の頭線の「井」の字をモチーフにしている。


このほか、乗務員室と客室の仕切り窓を一部拡大。子供が前面展望を楽しめるようにした。車内の案内表示器は多言語表記が可能なものに更新。開いているドアをチャイム音で知られる装置も設置した。

実証試験は井の頭線の全線12.7kmで実施する計画。回送列車で運転士と車掌が乗務した状態で実証試験を行い、自動運転システムの安全性や安定性、自動運転時に乗務員が行う業務・動作などを確認する。自動運転設備を搭載した車両も順次増やす予定だ。
京王電鉄は昨年2024年11月、井の頭線で自動運転の実証試験を行う計画を発表していた。同社は「少子高齢化や働き方改革などにより鉄道事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化している」ことを挙げ、鉄道運行の省力化が課題になっていることを示唆。「お客さまサービス向上や働きやすい職場環境の実現、省エネ運転によるCO2排出量削減により、持続可能な鉄道事業を目指してまいります」としている。
《関連記事》
・京王井の頭線「自動運転」実証試験 ワンマン運転の実現目指す
・京王線の高架化:笹塚~仙川(未来鉄道データベース)