愛知県や西尾市、蒲郡市、名鉄などで構成される名鉄西尾・蒲郡線の対策協議会は3月19日、一部区間に「みなし上下分離方式」を導入する方針を決めた。少なくとも2040年代初頭まで鉄道の存続を図る。

西尾・蒲郡線は、西尾線・新安城~吉良吉田24.7kmのうち西尾~吉良吉田9.7kmと、蒲郡線・吉良吉田~蒲郡17.6kmで構成される名鉄の鉄道路線。「西蒲線」「にしがま線」とも呼ばれる。この区間は利用者の減少で厳しい経営が続いており、2023年度の収支は約8億7800万円の赤字だった。沿線の西尾・蒲郡両市と名鉄は2005年に対策協議会を設置し、支援策や路線のあり方を協議している。
現在の支援スキームでは西尾・蒲郡両市が年間約2億5000万円を支援しているが、この支援策の期限が2025年度までとなっており、対策協議会は2026年度以降の路線の存廃や支援策を議論していた。
協議会で決定した方針によると、みなし上下分離方式の対象は蒲郡線の吉良吉田~蒲郡。国の社会資本整備総合交付金を活用し、鉄道事業再構築事業の実施を目指す。自治体の負担範囲は今後協議する。みなし上下分離方式への移行は2027年4月を予定。それまでは現行の支援体制を継続する。
一方、西尾線の西尾~吉良吉田はみなし上下分離方式の対象外とするが、これまで通り協議対象区間とし、蒲郡線と一体的に利用促進策を継続するという。
方針では鉄道事業再構築事業による運行期間を「15年を基本」としている。予定通り2027年4月からみなし上下分離方式に移行した場合、2041年度末までは鉄道の存続を図ることになる。
西尾・蒲郡線の輸送密度は1996年度で4064人だったが、翌1997年度はかつての国鉄再建法で廃止対象とされた4000人を割り込み、2006年度は10年前の3割減となる2829人に。2011年度は2715人に落ち込んだ。2012年度以降は増加基調に転じており、コロナ禍前の2018年度は2926人と3000人台目前に迫った。コロナ禍の2020年度は2227人、その後回復して2023年度は2609人だった。
線区別で見ると、西尾線の西尾~吉良吉田は利用者が比較的多く、輸送密度は2018年度が4757人、2023年度は4317人で、4000人台を維持し続けている。一方で蒲郡線の吉良吉田~蒲郡は2018年度が1917人、2023年度が1668人で、2000人を割り込んでいる。

ローカル線などで導入されている上下分離方式は、線路施設を自治体などの公的機関が所有し、鉄道事業者に無償で貸し付けて列車を運行する経営形態。これに対してみなし上下分離方式は、施設を従来通り鉄道事業者が所有するが、公的機関が線路施設の維持費用を負担することで、実質的に上下分離方式を導入する形になる。
西尾・蒲郡線の対策協議会によると、みなし上下分離方式の導入は上下分離方式より導入にかかる時間や費用を抑えられるのに加え、現在の支援スキームから大きな変更がなく、ほかの方式に比べ各種手続きが簡単になるなどの利点があるという。
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