島原鉄道のバス転換「現実的には厳しい」みなし上下分離方式で存続か 長崎県



長崎県は3月4日、厳しい経営が続き存廃問題が浮上している島原鉄道線について、バス転換は困難との認識を示した。

みなし上下分離とバス転換の2案が検討されている島原鉄道線。【撮影:草町義和】

島原鉄道線は、島原鉄道が運営する諫早~島原港43.2kmの鉄道路線。島原半島東側の北部を縦断する。長崎県によると、利用者数は2023年度で110万人を超えているが、コロナ禍が本格化する前の87%にとどまっている。鉄道事業の収支はコロナ禍前から年間約2億円の赤字が続き、2023年度も約2億1000万円の赤字だったという。

こうしたことから長崎県は、沿線の諫早・島原・雲仙・南島原各市や島原鉄道などで構成される「島原鉄道活性化検討部会」を2022年度に設置。国や自治体が線路の維持費用などを補助することで実質的に上下分離する「みなし上下分離方式」による鉄道存続と、バス転換による鉄道廃止の2案を基本に調査や検討を進めている。

長崎県はバス転換について「現状の利用者数や、運転手不足によるバス路線の縮小等が顕在化していることを踏まえると、現実的には大変厳しい」との認識を明らかに。事実上、みなし上下分離方式の導入が有力になっていることを示唆した。

その一方で「仮にみなし上下分離方式を導入するなら、線路などの維持管理にかかる新たな自治体の負担、少なくとも将来10年程度にわたって鉄道事業を維持できる体制、事業者自ら取り組む収支改善策について、関係者間で共有することが重要」と述べ、みなし上下分離方式にも複数の課題があるとの認識を示した。

「黄色いハンカチ」をホーム上の柵に掲げることで有名になった島原鉄道の大三東駅。【撮影:草町義和】

長崎県は「島原半島や沿線地域の持続可能な公共交通ネットワークの維持に向け、沿線市などとの合意が早期に得られるよう、引き続き議論を進めていく」と話した。本年度2024年度中には、みなし上下分離方式とバス転換のどちらかに決定するとみられる。

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