国土交通省の北陸信越運輸局長は12月26日、石川県や金沢市、北陸鉄道などが申請していた鉄道事業再構築実施計画を認定する。これを受けて石川県や沿線自治体が北陸鉄道線の施設の修繕や新型車両の導入などを支援。利便性の向上による公共交通の利用促進や経営の改善を目指す。計画期間は来年2025年4月1日から2040年3月31日の15年間。
実施計画の対象は北陸鉄道の石川線・野町~鶴来13.8kmと浅野川線・北鉄金沢~内灘6.8km。施設・車両の保有と維持管理、列車の運行は引き続き北陸鉄道が行うが、実質的に上下分離で経営する「みなし上下分離方式」を導入する。施設の整備費と修繕費の全額を石川県と沿線市町が全額負担。車両の更新や修繕費以外の維持管理費も上限を設けて支援する。
おもな利便性向上策の事業費は合計222億5000万円。一部は社会資本整備総合交付金を活用する予定だ。実施計画では「石川線への新型鉄道車両の導入」(39億5000万円)と「軌道・停車場の改良」(72億2000万円)、「利便性向上のためのキャッシュレス対応強化」(2億6000万円)、「石川線の増便・ダイヤ変更」「パーク・アンド・ライドの利用促進」を盛り込んだ。
線路などの地上施設はレールの重軌条化や道床交換を推進し、安全性の向上や乗り心地の改善、騒音の低減を図る。ホームの段差解消やスロープの設置、コミュニティスペースの設置も行う。サービス面では、北陸鉄道グループで利用できる交通系ICカード「ICa」やクレジットカードなどのタッチ決済によるキャッシュレス決済の導入拡大を推進する。
石川線ではこれらに加え、環境に配慮した新型車両を導入して従来車両を更新。二酸化炭素(CO2)の排出削減や乗り心地改善に加え、新型車両の導入効果による利用者増も図る。また、日中時間帯の増便による昼間時間帯の利便性向上に加え、新型車両の導入に合わせた朝夕通勤時間帯の増便にも取り組む。
石川線では現在、1990年に東急7000系電車を譲り受けて改造した7000系電車10両(2両5編成)と、京王3000系電車を譲り受けて改造した7700系電車2両(2両1編成)が旅客列車で運用されている。いずれも1960年代の製造で老朽化が激しい。
北陸鉄道線の輸送密度は、コロナ禍が本格化する前の2019年度で浅野川線が3750人、石川線が1883人。2021年度は浅野川線が2859人、石川線が1391人に落ち込んだ。昨年度2023年度は浅野川線が3247人、石川線が1629人まで回復したが、コロナ禍前の水準には戻っておらず、厳しい経営が続いている。
こうした状況を受けて2022年、沿線自治体を含む石川中央都市圏の法定協議会が設置され、北陸鉄道が上下分離による支援を要望。今年2024年5月、石川県と沿線自治体が上下分離の導入で合意し、11月に鉄道事業再構築実施計画の認定を申請していた。
北陸信越運輸局によると、北陸鉄道線の年間利用者数は2023年度の実績で266万1000人。2039年度は実施計画を行わなかった場合で238万7000人に減少するが、実施計画を実行した場合は314万1000人に増える。事業収支も2023年度実績の71%に対し、実施計画を実施した場合は2025~2039年度の平均で80%に改善される見込みという。
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