日本の郵便物はおもにトラックで運ばれているが、かつては鉄道による郵便輸送も盛んに行われていた。日本初の本格的な鉄道が開業した1872年には、すでに鉄道郵便輸送の制度が設けられている。

1892年には郵便輸送専用の荷物車(郵便車)が登場し、旅客列車に連結して運転されるように。単に郵便物を運ぶだけでなく車内で仕分け作業も行っていた。戦後の1954年ごろは郵便物の約8割が鉄道で輸送されていたという。
ちなみに1949年、国鉄は郵便車の側面にポストを設置。ホームから郵便物を投函することができるようにした。当時の国鉄は旅客利便性向上策の一環とアピールしていた。

写真は1952~1954年ごろに撮影されたとみられる郵便車のオユ61形で、側面の郵便ポストに郵便物を投函している客の姿が見える。便利といえば便利だが、郵便物の送付先と同じ方面に向かう郵便車に投函しないと、かえって時間がかかりそうだ。
郵便ポスト付きの郵便車はあまり長続きしなかったようだが、郵便輸送と車内での仕分け作業は郵便ポストの廃止後も続いた。ただ、飛行機やトラックなどほかの交通手段の発達で鉄道郵便輸送は衰退。車内での仕分けを伴う郵便輸送は1984年に終了し、1986年には郵便車を使った郵便輸送自体が消滅している。
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