JR東日本は3月4日、東北新幹線の新型車両「E10系」の設計に着手するとし、車両の概略や内外装のイメージなどを発表した。2030年度内の営業運転開始を目指す。

E10系電車はE2系電車内とE5系電車の後継になる次期東北新幹線車両。営業最高速度はE5系と同じ320km/hで、1編成の車両数もE5系と同じ10両とする。
外装は「東北地方の山々」を思わせる濃淡2色の緑色をベースにデザイン。上部の明るい緑色は「Tsugaru green(津軽グリーン)」、下部の濃い緑色は 「Evening elm(イブニングエルム)」としている。車体横のラインにより、従来の新幹線のイメージを継承しつつ、「日本らしさ」を表現するモチーフとして「桜の花弁」の形状を模した曲線を車両間でつなぐ。
デザイナーは英国ロンドンを拠点とするデザイン企業「tangerine」。JR東日本が同社の車両で海外デザイン会社を採用するのは初めてという。

車内は大型荷物置き場を拡大するほか全席に電源コンセントを設置。車椅子に乗ったまま車窓を楽しめる車椅子スペースの設置などでバリアフリー環境の向上も図る。また、JR東日本グループの荷物輸送サービス「はこビュン」に対応した設備も導入。荷物輸送用のドアを設置して荷物と旅客の動線分離を図る。




このほか、車内で仕事や勉強などをする客を優先するサービス「TRAIN DESK」を発展させたサービスを導入する。
JR東日本が今回発表したTRAIN DESK発展サービスの車内イメージによると、座席は横2+2列配置。座席間の仕切り板設置で遮音性やプライベート感を向上するほか、サイドウィングの大型化で周囲との目線を遮断する。座席背面には幅の広い可動式テーブルを設置して作業性を向上。コンセントのほかUSB電源を設置し、Wi-Fiルーターの増設による通信環境の改善も図る。



技術面では、車両の状態に応じた保守「スマートメンテナンス」に対応可能な車両システムを導入。新幹線の営業車両としては初採用になる自己通風型誘導電動機(ブロアレス誘導電動機)の導入で冷却モーターを不要にする。このほか、SiC素子の採用で車両駆動システムの効率向上を図る。
安全対策としては、高速試験車のE956形「ALFA-X」で検証してきた技術を活用。地震対策として逸脱防止用のL型車両ガイドに加え、ブレーキ距離の短縮や地震時の揺れを吸収する左右動ダンパの採用を行う。このほか、走りながら軌道の状態を監視できる軌道検測装置を搭載。将来的な東北新幹線の自動運転導入を目指した機能の搭載も準備する。
E10系は2027年秋以降に完成の予定。各種走行試験を経て2030年度内の営業運転開始を目指す。
JR東日本はJR北海道が運営する北海道新幹線の札幌延伸開業と札幌への直通運行を視野に入れ、360km/hでの営業運転が可能な営業車両の導入を目指して「ALFA-X」を開発。2019年から走行試験を実施している。一方、北海道新幹線の札幌延伸は2030年度末(2031年春)の完成・開業が予定されていたが、トンネル工事の難航で大幅に遅れる見込み。JR東日本が札幌延伸対応車両の開発スケジュールを変更するのかどうか、注目が集まっていた。

JR東日本は「ALFA-X」で検証した技術をE10系で活用するとしつつ「今後予定されている札幌開業に伴い運用する車両については、今回設計する車両(E10系)をベースに別途検討いたします」としており、E10系は直接的には札幌延伸とは関係しない車両になることを示唆した。
※画像の追加と本文の加筆を行いました。(2024年3月4日17時26分)
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