山口線の新駅構想「いったん保留」ホーム1面で20億円超、新規需要も小さく



山口市が構想しているJR山口線・湯田温泉~山口の新駅について、事業費が概算で20億円以上かかることが明らかになった。新駅の整備によって誘発される新規需要も事業費の割に小さいとみられ、同市は新駅の検討を一時保留することを決めた。

山口線の普通列車。【画像:武蔵の国/写真AC】

山口市は山口情報芸術センター「YCAM」などがある中園町周辺地域のアクセス向上や山口線の活性化を図るため、新駅の整備を構想。JR西日本コンサルタンツに事業費や需要などの検討調査を約700万円で委託し、3月に検討結果の報告書がまとまった。

報告書によると、新駅は1面1線の単式ホームを想定。ホームは長さ90.2m、幅2.7mとし、最大4両編成に対応する。駅舎は地平駅舎で70平方m規模。内訳は待合室を約20平方m、トイレを約30平方m、出改札など約20平方mとした。このほか、簡易券売機1台と簡易自動改札2台の設置を想定した。

設置場所は(1)椹野公園の南側に新駅(新山口起点11.333km)と新駅の南北を結ぶ橋上自由通路を整備、(2)椹野公園の南側に新駅を整備、(3)椹野公園から100mほど湯田温泉寄りに新駅(新山口起点11.235km)を整備、の3案を比較検討した。

概算事業費は(1)が約13億3000万円、(2)が約7億6000万円、(3)が約7億7000万円。費用が最も安く、公園を駅前広場のように使える(2)案を最適な案とした。

山口市が検討している新駅の想定地域(赤)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】
報告書で最適とされた新駅(2)案の位置や施設配置。【画像:山口市・JR西日本コンサルタンツ】

また、新駅の整備で湯田温泉~山口の所要時間がいまより2~3分程度長い7分になるとした。山口線は単線で、新山口~山口では列車の行き違いに対応している中間駅が大歳駅の一つしかない。所要時間が増えると現行の運行本数を維持できなくなったり、新山口駅で山陽新幹線の列車との連絡が図れなかったりするなどの課題があるという。

このため、現在と同等の輸送サービスを維持する場合は行き違い設備(湯田温泉駅)や留置線(山口駅)、折り返し線(宮野駅)の整備が必要とし、これら運行対策設備の整備に概算で約13億円かかるとした。新駅の整備を含めた概算事業費の総額は約20億6000万円に膨らむ。

一方、新駅の利用者数は1日あたり1239人と予測。このうち湯田温泉駅や山口駅から新駅の利用に切り替える人が622人で、残り617人が新規の利用者とした。

山口市の伊藤和貴市長は6月18日の市議会で、「新たな需要が1000人生まれるというのが一つの基準」「617人という数字は1000人から乖離(かいり)がある」などと答弁。同市都市整備部の中村千里部長も「新駅設置の検討はいったん保留とし、今後のまちづくりの進展や社会経済情勢の変化を慎重に見定める必要がある」と述べた。

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