常磐線の全線再開で鉄道博物館が企画展 津波と原発事故で運休9年



太平洋沿いに東京と宮城を結ぶ常磐線が今年2020年3月14日、9年ぶりに全線の運転を再開する。これに伴い鉄道博物館(さいたま市)は「全線運転再開記念 常磐線展」と題した企画展を開催する。

常磐線で運行されていた401系。【画像:鉄道博物館】

企画展では常磐線の歴史にちなんだものを展示。1893年に制作された常磐線の路線図や、かつて常磐線経由で上野駅(東京都台東区)と青森駅を結んでいた気動車特急「はつかり」の写真、常磐線の交流電化時に導入された401系電車の写真、常磐線経由の寝台特急「ゆうづる」のヘッドマークなどが展示される。

また、鉄道博物館が所蔵している駅名標や写真などを使い、常磐線の全駅を紹介する。

開催期間は3月14日から7月5日まで。鉄道博物館の入館料(一般1330円)だけで見ることができる。

寝台特急「ゆうづる」のヘッドマーク。【画像:鉄道博物館】
国際科学技術博覧会(つくば科学博)の開催にあわせて開業した臨時駅・万博中央駅の駅名標。【画像:鉄道博物館】

■災害による運休期間は戦後最長か

常磐線は日暮里駅(東京都荒川区)と岩沼駅(宮城県岩沼市)を結ぶ343.7kmの区間と貨物支線で構成される鉄道路線。列車は東北本線などに乗り入れて上野~仙台間や上野~青森間を結んできた。

常磐線経由で上野~青森間を結んでいた気動車特急「はつかり」。【画像:鉄道博物館】

131年前の1889年1月16日、水戸鉄道(現在の水戸線)の一部として現在の友部~水戸間が開業。のちに日本初の本格的な私鉄とされる日本鉄道の経営に移り、1905年4月までに現在の日暮里~岩沼間が開業した。翌1906年には国有化されて国鉄線に。1987年の国鉄分割民営化でJR東日本の路線になった。

同線は2011年3月に発生した東日本大震災の地震や津波により、壊滅的な被害が発生。同線の沿線にある東京電力の福島第一原子力発電所も、地震と津波による電源喪失で炉心溶融事故を引き起こして周囲に放射性物質をまき散らし、常磐線を含む一帯のエリアが立入禁止になった。

日暮里~いわき~広野間と原ノ町~相馬間、亘理~岩沼間は2011年中に運転を再開したが、立入禁止エリアを含む広野~原ノ町間は長らく復旧工事に着手できない状態に。相馬~亘理間も津波による被害が激しく、ルートの変更を伴う工事となり、時間がかかった。

相馬~亘理間は2013年に浜吉田~亘理間の運転を再開し、2016年には相馬~浜吉田間がルート変更のうえで再開した。広野~原ノ町間は2014年から2017年にかけ、立入禁止エリアの縮小にあわせて広野~富岡間と浪江~原ノ町間が再開。最後に残った富岡~浪江間が今年2020年3月14日、9年ぶりに運転を再開する。災害による鉄道の運休期間としては、戦後最長になるとみられる。

常磐線の特急列車で使われていた485系(右)と651系(左)。【画像:鉄道博物館】