山口線・湯田温泉~山口「新駅」検討 情報・文化ゾーンのアクセス駅、路線活性化も



山口市はJR山口線に新駅を設置する方向で検討を始めた。山口市の伊藤和貴市長が9月14日に開かれた山口市議会第4回定例会の一般質問で答えた。

山口線の列車。【撮影:草町義和】

新駅の設置場所は湯田温泉~山口の中園町周辺地域を想定。この地域は山口市が「情報・文化ゾーン」と位置付け、山口情報芸術センター「YCAM」や中央図書館などが整備されたほか、情報関連企業も進出している。済生会山口総合病院の建替整備や大規模イベント空間としても利用できる中央公園の整備も進む。

伊藤市長は中園町周辺地域の整備で「この地域を訪れる来街者が今後ますます増加する」とし、公共交通アクセス機能の確保や周辺の駐車場不足などの課題解決を図るための方策の一つとして新駅の設置を検討するという。

山口市が検討している新駅の想定地域(赤)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

山口線は山陽新幹線・山陽本線の新山口駅から山口駅を経由し、山陰本線の益田駅(島根県益田市)に至る93.9kmのJR線。山陽・山陰の地方都市を結ぶ特急列車のほか、新山口~津和野ではSL列車「SLやまぐち号」が運行されていることで知られる。

JR西日本は4月、輸送密度が2000人未満(2019年度)のローカル線の経営状況を公表。山口線の場合、2017~2019年度の営業係数(100円の収入を得るのにかかる費用)は宮野~津和野(輸送密度678人)が566で、津和野~益田(同535人)も681の赤字路線となっている。

JR西日本は経営状況の開示に際し「今後もさらなる人口減少など、環境変化が見込まれる中で、持続可能な地域社会の実現に向け、線区の特性の違いや移動ニーズをふまえ、地地域のまちづくりに合わせた、今よりもご利用しやすい最適な地域交通体系を地域の皆様と共に創りあげていく必要がある」と表明。沿線の自治体や住民と路線の今後の在り方について議論する考えを示している。

新駅の設置場所を含む新山口~山口は2019年度の輸送密度が6091人で経営状況の公表区間から外れているが、伊藤市長は市議会で「山口線は山口市を南北に縦貫し、山口・小郡両都市区間や中山間地域との往来、山陰と山陽の往来を支える重要な広域交通網だ」と答弁。新駅の設置は宮野以北の維持・活性化を図る狙いもありそうだ。

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