川崎重工業は2月13日、未来の公共交通システム「ALICE SYSTEM」を2050年のコンセプトモデルとして発表した。今年2025年4月から開催される大阪・関西万博で披露する。

ALICE SYSTEMはコンテナの旅客版といえるもの。コンテナに相当する旅客用キャビン「ALICE Cabin」と、ALICE Cabinの搭載に対応した自動車「ALICE Car」・鉄道車両「ALICE Rail」・船舶「ALICE Ship」・航空機「ALICE Aircraft」で構成される。
出発地でALICE Cabinに乗り込んだあとは、ALICE Cabinが自動的にALICE Car・ALICE Rail・ALICE Ship・ALICE Aircraftを乗り継いで目的地に向かう。出発地から目的地まで、客自身が乗り物を乗り換える必要はない。

ALICE Cabinの定員は4人。コンシェルジュ機能やリモートコミュニケーションシステムなどを備える。コンシェルジュ機能はロボットアームを活用したサービスシステム。音声で希望を伝えると、ロボットアームと連携しながら飲み物を注いだり、スマートフォンやタブレットを代わりに持ったり、コートやジャケットを着るのを手伝ったりする。
キャビンの壁面は半透過式ガラスディスプレイを採用。外の景色を見ることができるほか、動画や案内の表示なども行える。また、リモートコミュニケーションシステムを使って別のキャビンの様子を画面に表示。オンライン診療やリモート会議などにも対応する。
ALICE Cabinを搭載する乗り物は、水素を動力源にすることを想定。ALICE RailとALICE Carはモーターサイクル用水素エンジンを活用した発電機を動力源として搭載することを想定している。

大阪・関西万博の会場では、ALICE Cabinが接続する瞬間を切り取ったALICE Railを展示。実物大のALICE Railの内部に入り、ロボットアームの演出を見られるようにする。

コンテナ方式の旅客輸送のアイデアは古くからある。日本の国鉄の場合は1980年代、軌間が異なる新幹線と在来線の直通運転用として研究していた。旅客コンテナが横にスライドするようにして、新幹線コンテナ車と在来線コンテナ車のあいだを移動する方式を想定。国鉄の鉄道技術研究所(現在の鉄道総研)で動く模型が製作された。
また、業務用だがJR貨物が保有する性能測定用コンテナのZX45A形「Research Cabin」は、検査用の機器類に加え人が乗れるスペースも確保。これを試験列車に搭載し、作業員が乗りこんで性能測定を行っている。
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