東京メトロ「有楽町線で半蔵門線の電車」終電後に撮影会 通常は「怒られる撮影」もOK



東京メトロ・はとバスの2社は2月8日深夜(9日未明)、「ミッドナイト新富町」と題した夜間撮影会を開催した。東京メトロ有楽町線の新富町駅で、通常は同線を走ることがない半蔵門線の新型車両「18000系」を撮影するイベント。一般客がおらず静寂に包まれた終電後のホームで、カメラのシャッター音が鳴り響いた。

有楽町線の新富町駅で開催された半蔵門線18000系の撮影会。【撮影:鉄道プレスネット】

イベントの参加者と報道関係者は2月8日の深夜、はとバスが経営する新富町駅近くのホテルに集合。ここでしばらくのあいだ、現役の運転士と車掌によるトークやじゃんけん大会などが行われた。日付変わって1時10分ごろ、新富町駅に移動。地上出入口のシャッターを開けて無人のコンコースと改札口を通り抜け、和光市方面に向かう列車が発着するB線のホームに入った。

撮影会の前に現役の運転士・車掌によるトークやじゃんけん大会が行われた。【撮影:鉄道プレスネット】
一般客がいない新富町駅のコンコースを移動。【撮影:鉄道プレスネット】
新富町駅のB線ホームに到着。撮影場所を選ぶ。【撮影:鉄道プレスネット】

1時38分ごろ、18000系の第18112編成が和光市寄りのトンネルから姿を現した。反対側のA線をゆっくり走り、ホーム中ほどで停止。参加者が「もっと前まで」「もうちょっと」などと停止位置を「指示」し、それを東京メトロの関係者が携帯電話で運転士に伝え、編成の位置が撮影の「ベストポジション」になるよう微調整した。

18000系が反対側のA線に到着。撮影の「ベストポジション」になるよう停止位置を微調整した。【撮影:鉄道プレスネット】
行先表示を変えたりヘッドマークを掲出したりして、さまざまなシチュエーションで撮影できるようにした。【撮影:鉄道プレスネット】

一部の参加者は三脚や脚立を持ち込み、相当な高さから第18112編成を撮影している。これはもちろん、このイベントだから許されること。通常の営業時間帯なら確実に怒られ、場合によっては刑事事件になるだろう。こうしたことができるのも、終電後の時間帯を活用したイベントの魅力の一つになっている。

通常なら怒られそうな三脚や脚立の使用もOKだった。【撮影:鉄道プレスネット】

ちなみに、第18112編成は昨年2024年10月までに日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)で完成した編成だが、まだ営業運行には入っていない。それどころか半蔵門線にも入線しておらず、営業開始前の「未使用美品」の状態だ。この経緯や第18112編成のここまでの移動ルートなど詳細について、東京メトロは明らかにしていない。

これまでの目撃情報などによると、第18112編成は笠戸事業所から千代田線の綾瀬車両基地に搬入。その後、千代田線と有楽町線を接続する業務用の連絡線を経由し、和光市駅近くにある車両基地(和光検車区)に入ったようだ。今回のイベント終了後は有楽町線と南北線を結ぶ業務用連絡線を通り、南北線の相互直通先である東急目黒線などを経由して半蔵門線の鷺沼車両基地(東急田園都市線の鷺沼駅付近)に入るとみられる。

ゴールドのラインカラーで装飾された有楽町線の駅にパープルのラインカラーで装飾された半蔵門線の18000系が停車する姿はちょっとした違和感だ。【撮影:鉄道プレスネット】

2時20分ごろ、第18112編成は新富町駅を新木場方面に向け発車するが、ホームを外れてすぐのところで停車し、再び撮影が始まる。3時10分ごろには、新木場方面からB線を走ってきた有楽町線の17000系が第18112編成とほぼ同じ場所で停車。17000系と18000系が並ぶ姿の撮影が始まる。ここでも参加者が停止位置を細かく指示し、微調整が行われた。

第18112編成が発車。【撮影:鉄道プレスネット】
駅構内を少し外れて停車。【撮影:鉄道プレスネット】
行先表示を「急行 青山一丁目」などに変更。【撮影:鉄道プレスネット】
しばらくして新木場方面から17000系がやってきた。【撮影:鉄道プレスネット】

「ミッドナイト新富町」は一人3万円の有料イベントで先着30人を募集。東京メトロによると、いったん売り切れたがキャンセルがあり、最終的には26人が参加したという。

東京メトロCX・マーケティング部の板倉良和課長は、今回のイベントについて「新富町駅はホームの中柱がなく、鉄道ファンのあいだでは有名なフォトスポットになっている」と述べ、「18000系をたまたまこちら(有楽町線)で運用できることになった。この機会を逃すと、次はいつになるか分からないということで企画した」と話した。

終電後の時間帯を活用したイベントは今後も行われる可能性がありそうだ。【撮影:鉄道プレスネット】

今後については「『夜間』が一つのポイント。日中暑いときにやるのは過酷なところがあった。夜は夜なりにロケーションがいいところもある」と話し、終電から始発までの時間帯を活用した深夜イベントを引き続き開催する可能性を示唆した。

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