東京メトロ有楽町線・南北線の延伸「工事スタート」アクセス向上や混雑緩和目指す



東京メトロは11月5日、「有楽町線延伸」と「南北線延伸」の工事に同日から着手し、「新たな未来へ向けた新線プロジェクト」をスタートさせると発表した。拠点地域へのアクセス向上や既存路線の混雑緩和を目指す。

南北線の延伸区間(左)と有楽町線の延伸区間(右)を走る列車のイメージ。【撮影:草町義和(左)・鉄道プレスネット(右)、加工:鉄道プレスネット】

東京メトロは2022年3月に有楽町線延伸と南北線延伸の第1種鉄道事業許可を取得。その後は都市計画や環境影響評価の手続き、水道管などルート上の埋設物を確認する試掘調査などを行っていた。今年2024年5月に環境影響評価のうち工事着手前に行う手続きが完了。6月には都市計画決定も告示された。

開業時期は2030年代半ばを目指す。東京メトロは「両路線の延伸とその事業運営は、当社の未来への成長戦略」と位置付け、「地下鉄ネットワークの強化を通じて、臨海部・都心部へのアクセス利便性の向上や沿線まちづくりへの寄与、東京圏の国際競争力の強化に貢献するとともに、新たな鉄道需要を開拓していきます」とアピールしている。

有楽町線延伸(豊洲~住吉)

有楽町線延伸は「有楽町線分岐線」などとも呼ばれている新線。有楽町線の豊洲駅で分岐し、半蔵門線の住吉駅に至る。中間駅は枝川・東陽町・千石の3駅(いずれも仮称)。東陽町駅では東西線の同名駅に連絡する。建設距離は4.8kmで総建設費は約2690億円。

有楽町線分岐線の平面図。【画像:東京メトロ】

豊洲駅と住吉駅は有楽町線分岐線が乗り入れる部分も含め整備済みだが、豊洲駅は北側へ約7m拡張してホームを増設する改良工事もあわせて実施する。これにより同駅は単式・島式ホーム3面4線の構造になる。

豊洲駅の位置(左)と横断面図(右)。【画像:東京メトロ】

枝川駅は高さ約18m、幅約19mの地下構造物を建造し、相対式ホーム2面2線を設ける。東陽町駅の地下構造物は高さ約18m、幅約18mだが、東西線との立体交差部は高さが約10m。島式ホーム1面2線を設ける。千石駅の地下構造物は高さ約16m、幅約16mで島式ホーム1面2線を設ける。

枝川駅の位置(左)と横断面図(右)。【画像:東京メトロ】
東陽町駅の位置(左)と横断面図(右)。【画像:東京メトロ】
千石駅の位置(左)と横断面図(右)。【画像:東京メトロ】

駅は地上から地下へ掘り進む開削工法で建設。駅間のトンネルは直径約10mの複線シールドトンネルを採用するが、千石~住吉は直径約7mの単線シールドトンネル2本を建設する。

有楽町線分岐線の縦断面図。【画像:東京都・東京メトロ】
複線シールドトンネル(左)と単線シールドトンネル(右)の横断面図。【画像:東京メトロ】

東京東部・北部と千葉方面から臨海副都心へのアクセス向上に加え、豊洲市場や東京スカイツリーなどの観光拠点のアクセス向上を図る。豊洲~住吉の所要時間は現在の約20分から約9分に短縮する。この延伸部の整備により東西線の混雑緩和も図り、木場→門前仲町のピーク1時間あたりの混雑率は約20%の低減を見込む。

南北線延伸(白金高輪~品川)

南北線延伸は「南北線分岐線」などとも呼ばれている新線。東京メトロ南北線と都営三田線が合流する白金高輪駅で分岐し、品川駅(仮称)に延びる。中間に駅は設けない。品川駅ではJR線や京急線の同名駅に連絡する。建設距離は2.5kmで総建設費は約1310億円。

南北線分岐線の平面図。【画像:東京メトロ】

白金高輪駅に接続する部分と品川駅は開削工法で建設。それ以外は幅約10mの複線シールドトンネルを整備する。白金高輪エリアでは既設のトンネルの下に分岐線の地下構造物を整備。品川駅の地下構造物は高さが約17~22m、幅が約19~22mで、島式ホーム1面2線を設ける。

南北線分岐線の縦断面図。【画像:東京メトロ】
白金高輪駅の位置(左)と同駅付近の横断面図。【画像:東京メトロ】
品川駅の位置(左)と横断面図(右)。【画像:東京メトロ】

六本木や赤坂などの都心部とリニア中央新幹線の始発駅になる品川駅とのアクセス向上に加え、羽田空港や品川の開発エリアへのアクセス向上も図る。品川~六本木一丁目の所要時間は現在約19分のところ、約9分に短縮する。

《関連記事》
東京メトロ南北線・有楽町線の分岐線「都市計画変更」決定 東京都
東京メトロ有楽町線分岐線の新駅「出入口用地を公募」地下の単独2駅