京成電鉄の新型車両「3200形」報道公開 「変動リスク」に対応するフレキシブル車



京成電鉄は1月24日、新型車両「3200形」を宗吾車両基地(千葉県酒々井町)で報道関係者に公開した。「分割・併合」をコンセプトに開発された電車で、1編成の車両数を柔軟に変えられるようにしたのが特徴。同社が新型車両を導入するのは2019年デビューの3100形電車以来6年ぶりだ。

宗吾車両基地で報道関係者に公開された3200形。【撮影:鉄道プレスネット】

公開されたのは、4両編成(上野・押上寄りから4号車=3204+3号車=3203+2号車=3202+1号車=3201)と2両編成(上野・押上寄りから3206+3205)をつないだ6両編成。4両編成の場合、全車モーター付きだが3号車と1号車は成田空港寄りの台車のみモーター付きだ。パンタグラフは4号車と2号車に装備している。製造メーカーは日本車両で、総合車両製作所(J-TREC)も3200形を今後製造する。

公開されたのは4両編成(左手前)と2両編成(右奥)を連結した6両編成。【撮影:鉄道プレスネット】

京成初採用の連結器

外観デザインは京成車両の伝統になった青と赤のカラーリングを踏襲した。車外の行先表示器はLEDを採用。走行中は消灯することで消費電力の削減を図る。列車種別が途中で変更になる場合も案内を表示し、列車に乗る前に確認できるようにした。

車体側面の行先表示器。【撮影:鉄道プレスネット】

先頭車の運転台側は複数の編成を連結したときでも客が通り抜けできるよう、中央部に貫通ドアを設置。連結器は連結・分離作業を容易に行えるよう電気連結器を採用した。京成電鉄が中央貫通ドアを設けた車両を導入するのは、1982~1989年に製造された3600形電車以来のこと。電気連結器の採用は初めてだ。

先頭車のドアはほかの編成との連結に対応するため中央貫通ドアを採用。【撮影:鉄道プレスネット】
連結・分離作業を容易にするため京成車で初めて電気連結器を採用した。【撮影:鉄道プレスネット】

ちなみに、4両編成も2両1ユニットで運用できるようになっており、中間の2号車と3号車は電気連結器で連結。利用状況などに応じて2両単位で編成を組み替え、4・6・8両編成と1編成の車両数をフレキシブルに変えることができる。近年のコロナ禍による利用者の減少やインバウンドによる利用者の増加を背景に、京成電鉄は3200形を「変動リスクに対応した車両」と位置づけている。

4両編成の中間車で運転台のない2号車と3号車も電気連結器で連結している。【撮影:鉄道プレスネット】

4両編成は両端の車両(3204・3201)に運転台を設けているが、2両編成は成田空港寄りの車両(3205)のみ運転台を設置。このため、4両編成と2両編成の連結部は運転台が向かい合う形ではなく、運転台がある側とない側が連結された状態になっている。

車両間には転落防止ほろが設置されているが、4両編成と2両編成の連結部は運転台のない2両編成側だけほろがあり、運転台がある4両編成側にはほろがない。このため注意喚起策として、チャイム音と「車両連結部です。ご注意ください」という音声案内が流れるようになっている。

4両編成(左)と2両編成(右)の連結部。4両編成側には転落防止ほろがなく、2両編成側には運転台がない。【撮影:鉄道プレスネット】
車内から見た4両編成(手前)と2両編成(奥)の連結部。【撮影:鉄道プレスネット】

VVVFインバーター制御装置はハイブリッドSiC素子適用の2レベル方式電圧型PWM(パルス幅変調型)インバーターを採用して小型・軽量化を図った。モーターの大容量化や高効率化なども図っており、消費電力は3500形電車に比べ7割近く削減する。

ハイブリッドSiC素子適用のVVVFインバーター制御装置。【撮影:鉄道プレスネット】

京成車の「特徴」なくなる

車内の座席はロングシート。おもに京成本線を運行する車両であることが分かるよう、座席表地の色は青と赤を採用し、ソメイヨシノと菜の花をモチーフにした柄で装飾した。3100形のような折りたたみ席(折りたたみ時は大型荷物置場)は設けておらず、背もたれもハイバック式ではなく通常タイプを採用した。

3200形の車内。【撮影:鉄道プレスネット】
表地が青の座席。ソメイヨシノと菜の花をモチーフにした柄で装飾されている。

搭載機器の増加に伴い運転台のスペースが拡大したため、京成車の特徴になっていた運転台後方の2人掛け席は廃止し、戸袋窓もなくした。その代わり腰当てを設置している。車椅子スペースは先頭車に設置。中間車にはベビーカーやスーツケースなどの大型荷物を置くこともできるフリースペースを設けている。

運転台後方の座席と戸袋窓がなくなり腰当てが設置された。【撮影:鉄道プレスネット】
中間車に設けられたフリースペース。座席の表地は赤を採用している。【撮影:鉄道プレスネット】

車両間のガラス張りのドアは衝突防止のためシートデザインと同じ柄のフィルムが貼り付けられているが、よく見ると京成グループのマスコットキャラクター「京成パンダ」が柄に隠れるようにして描かれている。「京成パンダ」の位置は各車両のドアごとに異なる。

車両間のガラスドアに貼り付けられたフィルム。よく見ると……【撮影:鉄道プレスネット】
「例のパンダ」がいた。【撮影:鉄道プレスネット】

車内案内表示器は2画面一体型の17インチワイドLCDを採用。ドア上に設置して停車駅や乗り換え案内などを4カ国語で表示するほか、運行情報も案内する。また、空気浄化装置としてプラズマクラスターイオン発生装置を1両に4台設置。バリアフリー対応としてドア開閉をチャイムで知らせるほか、ドア上に開閉を案内するランプを設けている。

3200形の車内案内表示器。【撮影:鉄道プレスネット】
車内案内表示器の脇に防犯カメラが設置されている。【撮影:鉄道プレスネット】
天井のプラズマクラスターイオン発生装置。【撮影:鉄道プレスネット】

防犯カメラは1両につき3台設置した。客と乗務員が双方向でやり取りできる非常通話装置も搭載。この通話装置に連動して、客室内の防犯カメラ映像を運転台で確認できる機能を持たせている。

車内の非常通話装置。【撮影:鉄道プレスネット】
3200形の運転台。【撮影:鉄道プレスネット】
防犯カメラの映像は運転台上部のモニター(赤矢印)で確認できる。【撮影:鉄道プレスネット】

京成電鉄は一部の線区で2022年からワンマン運転を実施しているが、3200形もワンマン運転機能を実装している。3200形によるワンマン運転の開始時期などは未定だ。

3200形の運転台の背面に設置されているワンマン運転とツーマン運転の切替レバー。【撮影:鉄道プレスネット】

京成電鉄は3200形の今後の導入計画の詳細を明らかにしていないが、旧型車両の3500形電車などの置き換えを目的に順次導入する方針。4月に吸収合併する新京成電鉄の旧型車両も、合併後は3200形の導入により更新する方針だ。

京成電鉄3200形の主要諸元表。【資料:京成電鉄、修正:鉄道プレスネット】
3200形の導入に伴い3500形の置き換えが進む。【撮影:草町義和】

3200形は2月15日、京成電鉄と同社グループの京成トラベルが企画した「3200形デビュー記念 撮影会付き乗車ツアー」の列車として運行する予定。ツアーの申し込みは2月3日12時まで京成トラベルのウェブサイトで受け付ける。また、2月22日から京成線のおもな駅で「3200形運行開始記念乗車券」(1000円)が3200部限定で発売される予定だ。

通常の営業運行の開始日は未発表だが、早ければ2月中下旬には営業運行を開始するとみられる。

※追記(2025年1月27日20時27分):京成電鉄から主要諸元表について「制御装置の型式に誤りがあった」と連絡があり、該当する部分を修正しました。

《続報記事》
京成電鉄の新型車両3200形「営業運行の開始日」決定(2025年1月27日)

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