黒部峡谷鉄道、2025年も「一部区間の往復運行」に 追加工事で全線再開さらに延期へ



黒部峡谷鉄道は12月16日、来年2025年シーズンの観光トロッコ列車の運行計画を発表した。能登半島地震の影響で運休している猫又~欅平は2025年も再開を断念。今年2024年に引き続き宇奈月~猫又の往復運行を実施する。

2025年も折り返し地点になる黒部峡谷鉄道の猫又駅。【画像:occyannrider/写真AC】

運行期間は2025年4月20日~11月30日の予定。運行本数は11往復(11月25~30日は10往復)で、所要時間は折り返し地点の猫又駅でのトイレ休憩を含め往復約2時間になる。予約は1月10日から団体(15人以上)の受付を開始。個人(15人未満)の予約は4月1日から受け付ける。

黒部峡谷鉄道は冬季運休中の2024年1月に発生した能登半島地震で、猫又~鐘釣の橋梁(鐘釣橋)が東鐘釣山からの落石で損傷。早期復旧が困難だったことから、2024年シーズンの観光トロッコ列車は宇奈月~猫又で往復運行を実施し、猫又~欅平は運休した。

猫又駅は業務用のため、宇奈月方面から乗ってきた列車でそのまま折り返す必要があり、当初は停車時間中に列車の外に出ることもできなかった。10月には旅客用の仮設ホームが設置され、トイレ休憩として外に出られるようになった。

能登半島地震の影響で損傷した鐘釣橋の位置。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

黒部峡谷鉄道が12月13日に発表した2024年度の復旧工事の概要によると、落石が発生した東鐘釣山周辺で不安定な岩の除去と岩峰底部の接着などの工事を実施し、計画通り完了した。しかし、岩の除去後の現地調査で新たに岩の除去や接着などの対策が必要なことが判明。2025年度以降は追加対策を含む落石防止工事と鐘釣橋の復旧工事を行う予定だ。

このほか、欅平駅でも法面(のりめん)対策工事を行う計画で、2024年度は地質調査や準備工事を実施。2025年度以降に対策工事を実施する。

黒部峡谷鉄道は能登半島地震発生後の2024年3月、同年10月に全線再開すると発表したが、東鐘釣山の斜面などの損傷が想定以上に大きかったことから、5月には2024年中の全線再開を断念すると発表していた。黒部峡谷鉄道は今回の発表で、復旧工事は「2026年中の完了を目指す」として2025年中の全線再開を断念することを示唆。さらに「全線開通時期は見通せない」としており、再開時期のめどはたっていない。

黒部峡谷鉄道の終点の欅平駅と黒部ダムを専用鉄道や業務用ケーブルカー(インクライン)などで結ぶ関西電力の業務用物資輸送ルート(黒部ルート)では、「黒部宇奈月キャニオンルート」として一般開放・旅行商品化が計画されている。しかし欅平駅にアクセスできないことから、この計画も実施できない状況だ。

黒部ルートの業務用ケーブルカー(インクライン)。黒部峡谷鉄道の不通で一般開放・旅行商品化も延期されている。【画像:富山県】

富山県は2024年12月13日、黒部峡谷鉄道の発表を受けて2025年中の一般開放・旅行商品化を断念すると発表。「2026年以降となります黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放・旅行商品化の開始時期につきましては、黒部峡谷鉄道の全線開通時期が示された段階で改めてご案内いたします」としている。

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