脱線事故の影響で全線の運転を見合わせているいすみ線(千葉県)について、同線を運営する第三セクターのいすみ鉄道は12月9日、運休期間が長期化すると発表した。
事故は10月4日朝に発生。国吉~上総中川の苅谷踏切付近で2両編成の列車が脱線した。これを受けて、いすみ鉄道はいすみ線・大原~上総中野26.8kmの全線を運休中。2カ月が過ぎた現在も代行バスを運行している。
同社は今後について「これまで以上に安全性を確保するため、鋭意、必要な整備等を進めていますが、復旧期間の長期化が見込まれ、現段階では、再開見込時期をお知らせできない状況です」としており、再開のめどは立っていない。
代行バスは「ニーズに合わせて代行バスのダイヤ改正など柔軟に対応」しているとし、12月23日までの平日は一部の便でバスの台数を1台から2台に増やす。同社は来年2025年1月以降も臨時便や増車で対応する考えで、同月以降のダイヤ改正の内容は今年2024年12月下旬ごろに案内する。
いすみ線は1930年から1934年にかけ国鉄木原線として開業。国鉄再建法に基づき1981年に廃止が承認され、1987年に発足したJR東日本への暫定継承を経て1988年にいすみ鉄道が経営を引き継いだ。
国鉄時代の1977~1979年度の輸送密度は1815人だったが、いすみ鉄道としての実質的な開業初年度になる1988年度は1273人。これ以降、利用者はほぼずっと減り続けている。コロナ禍が本格化する前の2019年度は385人でコロナ禍の2020年度は294人だった。
いすみ線では11年前の2013年にも西畑~上総中野の庄司川橋梁で脱線事故が発生しており、このときは全線再開まで2週間近くかかった。2015年に運輸安全委員会(JTSB)が公表した事故調査報告書によると、枕木の腐食やひび割れによる軌間拡大で脱線したと考えられるという。また、JTSBの現場調査前に現場付近の軌道や車両の補修が実施されて現場保全が一部で行われていなかったとし、現場保全の重要性を認識するよう求めていた。
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