JR九州が新型検測車「ビッグアイ」導入 現役唯一「マヤ34形」引退へ



JR九州は10月26日、新型の多機能検測車「BIG EYE(ビッグアイ)」の走行試験を11月から始めると発表した。老朽化した高速軌道検測車のマヤ34形事業用客車に代わる車両として導入を目指す。

JR九州の多機能検測車「BIG EYE」のイメージ。【画像:JR九州】

「BIG EYE」は2020年7月豪雨災害で被災した車両をリニューアルする形で開発。軌道検測装置と部材検査支援カメラ装置、建築限界測定装置を搭載する。軌道検測装置はレールにレーザを照射するなどして線路のゆがみを測定。データは無線で伝送する。建築限界測定装置はホームやトンネル、信号設備などにレーザを照射し、線路からの距離を連続的に測定する。

部材検査支援カメラ装置は、ラインセンサカメラでレールやレール・枕木を固定する金具(レール締結装置)の状態をチェック。レールとレールをつなぐボルト類の状態などを高精度に撮影する。この画像データを用いてAIの開発を行い、不良箇所の自動判定技術の確立を目指すという。

「BIG EYE」に搭載される装置。【画像:JR九州】

車両やロゴのデザインは、社内で建築業務を行っている社員のあいだでコンペを実施して決めた。車体の側面には軌道変位を表現した波形をあしらった。前面や背面のデザインはヘッドライトの目玉や牛をモチーフにすることで、子供にも親しみをもってもらいたいという思いを込めたという。

JR九州によると、従来は係員が行っていた目視による線路点検や検査業務を「BIG EYE」による高頻度・高精度のデータ測定に移行。各装置から取得するビッグデータを活用し、安全性と生産性を両立した持続可能なメンテナンス体制を構築する。高頻度に検測を行うことでTBM(時間基準保全)からCBM(状態基準保全)への転換を図り、安全で効率的なメンテナンスの実現を目指すという。

JR九州は今年2023年11月から来年2024年3月までのあいだ、「BIG EYE」の走行試験を実施。検測データの精度の検証のほか、機器の耐久性やデータ解析のシステム構築など運用開始に向けた性能評価を行う。実際の導入は試験結果を踏まえて検討を進めるとしている。

JR九州の唐津線で軌道検測を行うマヤ34 2009(中央)。【画像:ninochan555/写真AC】

JR九州は1987年の発足時にマヤ34形1両(マヤ34 2009)を国鉄から引き継ぎ、線路のチェックに使用している。マヤ34形は1959年から1981年にかけ10両が製造。このうち9両をJR旅客6社が引き継いたが、JR九州を除く5社のマヤ34形は新型検測車の導入などに伴い2018年までに引退した。JR九州のマヤ34 2009のみが現役車両として唯一残っているが、「BIG EYE」の導入で引退することになりそうだ。

※加筆、画像追加しました。(2023年10月26日15時01分)

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