JR東日本は12月6日、国土交通大臣に鉄道事業の旅客運賃上限変更認可を申請した。認可された場合、2026年3月に運賃を改定して全エリアで値上げする。全体の改定率は7.1%で年間881億円の増収を見込む。普通旅客運賃の初乗りは8~10円の値上げ。

JR東日本の運賃区分は幹線と地方交通線に加え、東京を中心に幹線より安いエリア(電車特定区間・山手線内)の合計4区分ある。今回の改定では「わかりやすい運賃体系」を実現するとして、電車特定区間と山手線内を廃止して幹線運賃に統合。運賃区分を幹線と地方交通線の2区分に集約してシンプル化を図り、そのうえで幹線・地方交通線ともに値上げする。一方、運賃以外の料金は改定しない。

普通旅客運賃の平均改定率は7.8%で幹線は4.4%、地方交通線は5.2%。10kmまでの区間は税抜運賃を4.7%引き上げ、11~600kmの区間は賃率を4.7%分引き上げる。601km以上の賃率は据え置く。消費税の転嫁方法は現在の電車特定区間・山手線内と同様、紙の切符の運賃(10円単位)はICカード運賃(1円単位)の端数を四捨五入から切り上げに変更する。現在のIC運賃は一部の距離帯で紙の切符より高くなるケースがあるが、この変更で一部区間の子供運賃を除き紙の切符より安くなるか同額になる。
改定後の初乗り運賃は紙の切符が160円でICカードは155円。現行運賃と比較した場合、紙の切符は10円の値上げになる。ICカードは幹線が8円の値上げで、電車特定区間・山手線内は9円の値上げ。

101km以上のおもな区間では、東京~高崎や東京~宇都宮(101~120km)が現行1980円のところ110円値上げの2090円。東京~仙台や東京~山形(341~360km)は220円値上げの6270円で、東京~新青森や大宮~新青森(681~720km)は440円値上げの1万780円になる。
定期旅客運賃の平均改定率は通勤が12%で通学は4.9%。通勤定期の場合、幹線は7.2%、地方交通線は10.1%だが、通学定期は家計負担に配慮するとして幹線・地方交通線ともに改定しない。ただし幹線に統合される電車特定区間は8%、山手線内は16.8%の改定になる。11~15kmの区間の場合、幹線の通勤1カ月は300円値上げの6240円。現在の電車特定区間・山手線では620円の値上げだ。

このほか、私鉄と競合している区間で通常の運賃より安くしている特定区間の運賃は「路線形態の変化から当社とは直接競合関係とならない区間やお客さまのご利用が少ない区間」などがあるとして、上野・日暮里~成田や新橋~田浦・横須賀・衣笠・久里浜など計18区間を廃止。東京~西船橋や新橋・浜松町・田町~逗子など計12区間は引き続き設定する。特定区間運賃は上限運賃の認可後に届け出る予定。

JR東日本が全エリアで運賃を改定するのは、消費税率の引き上げを除くと1987年の発足以来初めて。同社によると、沿線人口の減少やコロナ禍を機に定着したテレワークの影響による利用者の減少に加え、エネルギー価格や物価の高騰による経費の増加、人材確保に向けた待遇改善などで厳しい経営が続く見込み。老朽化した車両や設備の更新などのための資金を安定的に確保することが困難な状況になっていることから、運賃改定を申請したという。
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