宮崎県は12月4日、「東九州新幹線等調査結果」を公表した。基本計画が決定している東九州新幹線に加え、従来考えられていなかったルートで新幹線を整備する場合について、整備費や需要などを予測、推計した。

宮崎県が調査したのは三つのケース。小倉~鹿児島中央の「日豊本線ルート」(379km)と宮崎~鹿児島中央の「鹿児島中央先行ルート」(103km)、新八代~宮崎の「新八代ルート」(141km)を調査した。
日豊本線ルートは東九州新幹線を従来考えられていたルートの全線を整備するもので、鹿児島中央先行ルートは東九州新幹線の鹿児島寄りの一部を先行整備する。新八代ルートは基本計画が定められていない新しいルート。九州新幹線(鹿児島ルート)の新八代駅で分岐し、宮崎方面を結ぶ。

整備費は近年の整備新幹線の事例をもとに各構造物の単価を定めて試算した。日豊本線ルートが最も高い3兆8068億円で、鹿児島中央先行ルートは1兆642億円。新八代ルートは1兆4978億円になった。

所要時間は整備新幹線の平均表定速度(210km/h)を基本とし、宮崎・都城・延岡の3市から福岡・北九州2市までの所要時間を算出。宮崎市~福岡市の場合、現在の所要時間が3時間51分なのに対し、日豊本線ルートは2時間13分短縮の1時間38分、鹿児島中央先行ルートは1時間39分短縮の2時間12分、新八代ルートは2時間27分短縮の1時間24分だった。
宮崎市・都城市~福岡市・北九州市の場合、いずれのケースでも現状の所要時間からの短縮時間が最も大きいのは新八代ルート。これに対して延岡市~福岡市・北九州市の短縮時間は日豊本線ルートが最大になった。

需要推計はコロナ禍前の2018年度の移動者数をベースとし、2060年度の開業を想定して推計した。1日あたりの断面交通量が最も多いのは日豊本線ルートで1万2416人。新八代ルートが8710人で続き、最も少ないのは鹿児島中央先行ルートの5701人だった。

費用便益比(B/C)は2045年度から建設開始、2060年度に運行開始と仮定して試算。社会的割引率(時間経過による費用・効果の価値低下の補正)が0%か1%なら事業費以上の効果があるとされる「1」以上になるが、2%か4%なら「1」未満になるとした。

宮崎県は各ルートの利点や課題について、日豊本線ルートは「本州から宮崎までの時間短縮効果が大きい。一方、整備区間は最も長くなる」、鹿児島中央先行ルートは「整備区間は最も短いが、時間短縮効果の最大化には全線開業が必要」、新八代ルートは「九州の中心である福岡からの時間短縮効果が大きいが、基本計画路線としての位置付けに課題がある」と評価している。調査結果については「広く県民の皆様と共有し、新幹線整備に対する理解と関心を高めるために活用してまいります」としている。
東九州新幹線は福岡市から大分市付近、宮崎市付近を経て鹿児島市に至る新幹線の計画。1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づき基本計画が決定された。従来は博多(福岡)~小倉で既設の山陽新幹線に乗り入れ、小倉~鹿児島中央は日豊本線に並行して建設することが考えられていた。
近年は別のルートで整備する考えも浮上しており、昨年2023年は大分県が福岡市~大分市を久大本線並行ルートで整備するケースも含めて調査を実施。宮崎県も東九州新幹線のルートから外れる新八代ルートを含めた調査に今年2024年から着手していた。
《関連記事》
・宮崎県の新幹線調査「日豊」「新八代」に「先行整備」も 予算案に計上
・新幹線・新八代~宮崎の整備「有力な選択肢の一つ」宮崎県が調査へ 延岡市は反発