JR久留里線の一部区間を廃止し、バスなどによる「自動車中心の交通体系」に移行する方向性が決まった。10月28日、千葉県や君津市、JR東日本などで構成される検討会議が検討結果の報告書を策定した。関係者は今後、鉄道廃止後の交通サービスについて詳細の検討を進める。
久留里線は房総半島の内房側と山間部を結ぶ木更津~久留里~上総亀山32.2kmのローカル線。JR東日本は昨年2023年3月、利用者がとくに少ない久留里~上総亀山の9.6kmについて「総合的な交通体系に関する議論」を行いたいと千葉県や君津市に申し入れた。
これを受けて同年5月、沿線地域(上総地区)の交通サービスのあり方を検討する「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」が発足。今年2024年10月21日の5回目の会合で報告書案の内容を議論して終了した。
報告書によると、久留里~上総亀山の輸送密度は2023年度で64人。道路整備や沿線人口の減少などでJR発足時点の1987年度(823人)から92.2%減少している。列車の定員は1両100人程度なのに対し1列車あたりの利用者数は7~8人で、報告書は「輸送力が過剰」であるとした。
同区間の年間収支は2022年度で2億4500万程度の赤字。上下分離方式の導入など公的支援を入れた形での鉄道維持について、報告書は「この規模の額を国・県・市などが毎年度補助することは、本路線の利用状況や他の鉄道会社とのバランスを考慮すると、納税者の理解を得ていくことは、極めて厳しい」とした。
一方、報告書は上総地区で「平日最大15人程度、休日最大20数人程度のまとまった移動需要と、それ以外の散発的な移動需要」とあるとし、現在の鉄道や高速バス、デマンド交通は「これらの移動需要に適していない」と指摘。それぞれの移動需要に対応した交通手段の整備が必要とした。
このうち「まとまった移動需要」は「定時定路線型の交通手段」で対応。中型バスやマイクロバスなどの自動車交通を導入し、現在の久留里線の運行本数(8.5往復)以上の本数を運行するのが望ましいとした。
ただし、事業として成立する程度の利用客を継続して確保することは困難で、事業主体や運行形態について検討が必要なことや、昨今の運転士不足などの課題があることに留意する必要があるとした。また、千葉~鴨川を結ぶ高速バス「カピーナ号」の上総地区内での相互乗降化について、速達性の低下などの課題を挙げつつ実現の可能性を検討する必要があるとした。
「散発的な移動需要」への対応はデマンド型の交通手段が適しているとし、現在運行されているデマンドタクシー「きみぴょん号」が移動実態に合致しているとした。ただし需要が高い時間帯に予約が取れないなどニーズに応え切れていないことや運行時間、財政負担などの課題があるとし、効率的な配車を検討する必要があるとした。
JR東日本は今後、この報告書に基づき上総地区の交通体系の検討を行う。最終的には地域公共交通活性化法に基づく法定協議会(君津市地域公共交通会議)で時間帯・エリアごとに最適な運行ルートや交通手段の組み合わせ、コスト負担を検討し、決定する方向だ。
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