新金貨物線の旅客化「バス専用道案」鉄道との比較で浮上 貨物列車の扱いは?



JR総武本線貨物支線(新金貨物線、新金線)の旅客化を構想している東京都葛飾区は、鉄道旅客化の比較対象としてバス専用道を整備する案の検討を新たに始めた。9月27日に開かれた葛飾区議会都市基盤整備特別委員会で、バス専用道案を含む検討状況を報告した。

現在は貨物列車のみ運行されている新金線。単線だが複線化用地(右)が確保されている。【撮影:草町義和】

新金線のうち旅客化の対象になっているのは、総武本線の新小岩駅と常磐線の金町駅を結ぶ約7kmの区間。線路施設はJR東日本が保有しているが、通常はJR貨物の貨物列車のみ運行されている。

旅客化に際しては事業費に加え、自動車交通量が多い国道6号(水戸街道)と平面交差している新宿(にいじゅく)新道踏切の扱いなどが課題になっている。このため、高架化や複線化を前提に整備することや、地上・単線のまま路面電車タイプの軽量軌道交通(LRT)として整備する案、新宿新道踏切以南を先行整備する案などがこれまで検討されてきた。

新たに浮上したバス専用道案は、新金線の線路に沿ってバス専用道を整備し、連節バスを走らせるもの。新金線は単線だが複線化用地が確保済みで、この用地を活用して専用道を整備する。新金線は従来通り貨物列車のみ運行。バス専用道を走る連節バスと新金線の貨物列車が並走する形になる。

新金線の貨物列車と並走する連節バスのイメージ。複線化用地を活用して線路の脇にバス専用道を整備する。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット】

新金線の線路を残しつつ専用道を整備する場合は1車線(幅4m)になるため、上下のバスが行き違いできるスペースが必要。停留所に行き違いスペースを設けることが考えられるが、葛飾区は「停留所とは限らず行き違いができるスペースを設ける必要があると考えている」としている。

1車線しかないバス専用道の行き違いスペース(かしてつバス)。停留所以外の場所にも設けられている。【撮影:草町義和】

バス専用道は、旅客化対象区間のほぼ全線にわたり専用道を整備する案と、南側の区間に専用道を整備して北側は一般道を走行する案の2ケースを想定している。

全線整備案は、専用道の整備に活用できる線路敷地がない金町駅(南側)付近や、都市計画道路の整備による線路の移設で専用道を整備できない高砂踏切付近を高架化。新宿新道踏切は平面交差にする。一部整備案では、金町駅の北口から高砂踏切まで一般道を走行。高砂踏切以南は専用道を整備する。

専用道の全線整備案のイメージ(赤)。金町駅付近と高砂踏切付近は高架化する。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】
専用道の一部整備案のイメージ。南側は専用道(赤)を整備し、北側は一般道(青)を走行する。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

全線整備案は高架化による事業費の増大などが課題。一部整備案は定時性や速達性の確保に加え、連節バスが金町駅の北口駅前広場で転回できるかどうか詳細な検証が必要などの課題がある。新小岩駅への接続は2ケースとも同駅の東北広場で連節バスを転回する想定。バスの停車スペースの確保が課題になる。

運行する連節バスは環境負荷を軽減を図るため、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の導入を想定している。

新金線の旅客化の検討では、これまでも既設の線路を使わないケースとしてモノレールや自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT、新交通システム)を整備する案が比較対象として検討されたことがある。葛飾区によると、鉄道による旅客化を断念したわけではなく、鉄道案と並行してバス専用道案を検討しているという。同区は今後、概算事業費の算出や事業計画の検討を進める。

鉄道の敷地を活用してバス専用道を整備する取り組みはバス高速輸送システム(BRT)の一種として各地で行われている。近年の例では鹿島鉄道線(茨城県、2007年廃止)の線路敷地を活用した「かしてつバス」や、2011年の東日本大震災で被災した線路敷地を活用したJR東日本の気仙沼線BRT(宮城県)などがある。

西武多摩湖線(東京都)では、複線化用地として確保されたスペースのうち国分寺駅付近から約400mがバス専用道として整備され、西武バスの路線バスが運行されている。

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