JR貨物が車両整備時にデータ改竄(かいざん)などの不正行為を行っていた問題が、ほかの鉄道にも波及している。
JR貨物は9月10日、機関車や貨車の車軸に車輪をはめ込む作業(輪軸組立作業)で、検査データの圧入力値が基準値を超えていた場合、データを改竄するなどの不正行為を行っていたと発表。国土交通省が9月12日、全国の鉄軌道事業者に対し輪軸の緊急点検を実施するよう指示した。
その結果、JR東海や東京メトロなど旅客列車を運行している事業者でも、圧入力値が目安値を超えていた輪軸があることが判明。一部では検査データの改竄も行われていた。これに伴い一部の旅客列車が車両を減らしたり運休するなどの影響が出ている。
JR東海
JR東海によると、新幹線車両の輪軸8000本と在来線車両の輪軸3880本を対象に点検。車輪の圧入作業で最大圧入力値が目安値を超過している輪軸が在来線車両で11本見つかったという。当該車両は運用を一時停止し、特急「しなの」などで車両を減らして運転した。
東京メトロ・東葉高速鉄道・埼玉高速鉄道
東京メトロによると、同社の全9路線で運用している約2700両、約1万1000軸を対象に点検したところ、圧入力値が同社の基準値を超過している輪軸が225軸あることが判明。これを受けて9月14日、南北線の列車を一部運休したという。
圧入力値は平均で約3%、最大で約34%超過していた。銀座線と丸ノ内線を除く上限基準値10%以内の当該車両(223軸)は超音波探傷検査を実施しており、安全性を確認したうえで使用。銀座線と丸ノ内線の当該車両(39軸)は使用を一時中止し、超音波探傷検査を実施したうえで安全性を確認し、使用を再開した。
東京メトロは同社グループのメトロ車両に輪軸組立作業を委託しており、東京メトロ線に乗り入れている東葉高速鉄道と埼玉高速鉄道の車両の輪軸組立作業も東京メトロが受託したうえでメトロ車両に委託している。東葉高速鉄道の車両では2軸、埼玉高速鉄道の車両は6軸で基準値が超過している輪軸やデータ改竄があった輪軸があることが判明した。
都営地下鉄・都電
東京都交通局によると、浅草線(27編成・864軸)と三田線(37編成・992軸)、新宿線(28編成・1120軸)、大江戸線(58編成・1856軸)、都電荒川線(33両・132軸)を対象に点検を実施。三田線の203軸と新宿線の230軸、大江戸線の1軸、荒川線33軸でデータの差し替えがあったことが判明した。このほか、三田線の96軸はデータが確認できなかった。緊急点検により安全性に問題ないことを再確認したという。
輪軸組立作業は京王重機整備が受託。同社は東京都交通局に対し「車輪を軸にはめ込む作業の圧入力の値が当局の指示した基準値を逸脱していたにもかかわらず、当局に対しては基準値内の数値に差し替えて提出していた」と報告したという。
国土交通省は東京メトロとメトロ車両に対し、9月19日から特別保安監査を実施することを決定。全国の鉄軌道事業者に対し9月30日までに緊急点検の結果を報告するよう求めている。基準値超過や不正行為の報告は今後も増えるとみられ、焦点はJR貨物単独の問題から法令運用面の不備に移りそうだ。
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