北陸新幹線の米原ルート「拒否」滋賀県知事、並行在来線は「存在しない」



愛知県など中部圏9県の知事と名古屋市長で構成される中部圏知事会議が7月11日に金沢市内で開催された。同会議に出席した滋賀県の三日月大造知事は、米原ルートでの整備を求める動きが高まっている北陸新幹線の未着工区間(敦賀以西)について、小浜・京都ルートによる早期整備を求める考えを示した。

北陸新幹線の敦賀駅。【撮影:草町義和】

敦賀以西のルートは米原ルートや湖西ルート、小浜・京都ルートなど複数の案が検討され、2016年には小浜・京都ルートで整備する方針が与党プロジェクトチームで示された。鉄道・運輸機構は現在、小浜・京都ルートの採用を前提にした環境影響評価の手続きを進めており、今年2024年内には詳細なルートを示すとみられる。

しかし北陸新幹線の金沢~敦賀が3月に延伸開業したのを機に、距離の短さから建設費の低減や工期の短縮を図れる米原ルートが再浮上。石川県議会や同県の能美・小松・加賀各市議会などが米原ルートの再考を求める決議を6月までに採択している。

こうした動きに対し、三日月知事は中部圏知事会議で「敦賀以西のルートとして小浜・京都ルートと考えており、一日も早い大阪開通を目指す」と述べ、米原ルートでの整備を事実上拒否。さらに「敦賀~新大阪間の整備に伴う並行在来線は存在しない」との考えも示した。

滋賀県はかつて、滋賀県内を通る米原ルートでの整備を求めていた。しかし2016年に与党プロジェクトチームが小浜・京都ルートの採用を事実上決めたのを受け、米原ルートの整備を事実上断念。一方で「並行在来線の経営分離を阻止するという大きな命題に向けて取り組む」(2017年2月16日、滋賀県議会での三日月知事の答弁)とし、同県の関心は並行在来線の扱いに移っていた。

現在の整備新幹線は、財源の安定確保や収支採算性の確保に加え、沿線自治体が並行在来線の経営分離に同意することなどを着工の条件としている。

北陸新幹線を米原ルートで整備した場合、直接的には北陸本線の米原~敦賀が並行在来線になり、湖西ルートも湖西線などが直接的な並行在来線になる。いずれも滋賀県内を通る路線で、経営分離の対象になれば滋賀県の財政負担や存廃問題につながる可能性が高い。これに対して小浜・京都ルートは滋賀県内を通らず、直接的な並行在来線も滋賀県内には存在しなくなる。

北陸新幹線の米原ルート(青点線)と小浜・京都ルート(赤点線)。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

ただし、西九州新幹線の武雄温泉~長崎(2022年9月開業)の事業化に際しては、直接的には同新幹線に並行しない長崎本線・肥前山口(現在の江北)~諫早が並行在来線とされた。新幹線の開業で長崎本線を走る特急列車の利用者が新幹線に移るため、実質的な並行在来線として取り扱った格好だ。

長崎本線・肥前山口~諫早の沿線自治体は新幹線の便益を受けられないのに経営分離を受け入れる必要がある状態になったため、強く反発。最終的には佐賀県と長崎県が設立した一般社団法人の佐賀・長崎鉄道管理センターが線路施設を保有し、JR九州が同センターから線路施設を借り入れて列車を引き続き運行することで決着した。

湖西線を走る列車。【撮影:草町義和】

北陸新幹線も小浜・京都ルートで整備されれば、大阪~敦賀を結ぶ特急列車の利用者が新幹線に移るのは確実で、JR西日本が湖西線などを実質的な並行在来線として扱う可能性もある。三日月知事の発言は小浜・京都ルールを支持するとともに、同ルートに並行在来線が存在しないとの認識を示すことで、湖西線などが並行在来線として経営分離の対象にならないよう強くクギを刺した格好といえる。

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