札幌市電「値上げ」2024年12月1日から 停留場ネーミングライツの検証など実施



札幌市電を運行する札幌市交通事業振興公社は5月15日、旅客運賃の上限変更認可を国土交通省の北海道運輸局長に申請した。認可された場合、振興公社は12月1日に値上げする。

札幌市電の低床車。【撮影:草町義和】

普通旅客運賃の上限は現行200円のところ改定後は30円値上げして230円に。通勤定期旅客運賃の上限は6%ほど値上げし、1カ月の場合は500円値上げして8690円にする。通学定期旅客運賃の上限は1%程度の値上げに抑え、1カ月の場合は60円値上げの5930円になる。上限の範囲内で設定する実際の運賃(実施運賃)について、振興公社は認可後に改めて案内するとしている。

現行運賃と改定後の運賃。【画像:札幌市交通事業振興公社】

札幌市電は2020年4月から上下分離方式の経営体制に移行。振興公社が札幌市交通局から軌道設備を借りて路面電車を運行している。

振興公社によると、2023年度の利用者数はコロナ禍の収束に伴い回復基調にあるものの、上下分離前に見込んでいた利用者数を依然として下回っている。また、電気料金の値上げや物価上昇で経費が増大し、経営を圧迫している状況だ。今後は施設使用料の増加が見込まれているのに加え、人件費の上昇や少子高齢化で人員確保も楽観できない状況。当面は厳しい経営状況が続く見通しで、路面電車を将来世代に継承するため運賃の値上げを申請した。

2022年度の収支実績は16億4600万円の収入に対し支出は18億3900万円で、1億9300万円の赤字。2025~2027年度の3年間合計の推計では現行運賃のままなら8億4600万円の赤字だが、値上げした場合は2億8900万円の赤字に縮小できる見通しという。

札幌市電の路面電車。【撮影:草町義和】

振興公社は今後、増収策として記念乗車券の販売やラッピング広告の展開、停留場ネーミングライツの本格実施に向けた検証を実施する考え。施設や車両を保有する札幌市交通局も低床車を年1両のペースで引き続き導入するほか、停留場のバリアフリー化の推進や軌道の振動を抑える制振軌道の整備による乗り心地向上を実施する考えだ。

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