東京メトロ東西線の運休区間「徒歩で移動」東陽町~西葛西、マニア向けのポイントも



日本の鉄道路線では最も混雑が激しいことで知られる東京メトロ東西線の東陽町~南砂町~西葛西で5月11・12日の2日間、「終日運休」が実施される。南砂町駅の線路切替工事に伴うもの。東京メトロはほかの鉄道などへの迂回に加え、徒歩での移動も呼びかけている。

東京メトロ東西線の南砂町駅。2024年5月11・12日は同駅を含む東陽町~西葛西が終日運休になる。【撮影:草町義和】

代行バスも運行されるが東西線の列車に比べると輸送力が非常に小さく、バスの待ち時間だけでも相当長くなりそうだ。それなら運休区間を徒歩で移動するとどれくらいかかるのか。私は実際に東陽町駅から西葛西駅まで歩いてみた。

東陽町駅→南砂町駅

5月5日の午後、東西線の列車に乗って東陽町駅に到着。駅構内は運休に関する案内のポスターがこれでもか、これでもかというくらい大量に貼られている。駅構内の自動放送でも運休の案内が流れていた。

駅構内のあちこちに貼られていた終日運休のポスター。【撮影:草町義和】

駅の西側にある1番出入口から地上に出て、東西線の上を通る都道10号(永代通り)の歩道を東に進む。車道も歩道も混雑しておらず歩きやすい。数分ほどで駅東側の6番出入口付近に到達。そのまま永代通りを東へ歩いていく。

東陽町駅の西側にある1番出入口。【撮影:草町義和】
東西線の上を通る永代通り。【撮影:草町義和】
南砂町駅東側の4番出入口と東陽4丁目交差点を過ぎてさらに東へ進む。【撮影:草町義和】
車道も歩道も幅が広くて通りやすい(南砂2丁目交差点付近の歩道橋から)。【撮影:草町義和】

東陽4丁目交差点を過ぎて少しすると、北側にカーブを描いて永代通りから離れていく遊歩道がある。路面電車の専用軌道敷を活用して整備したものだ。1929年に城東電気軌道として開業。のちに東京乗合自動車への合併や東京地下鉄道への事業譲渡を経て都電になったが、1972年に廃止されている。こちらのほうを歩きたくなるが、今回はそういうわけにはいかない。

永代通りから分岐した遊歩道。城東電軌の流れをくむ都電の専用軌道敷地を活用して整備した。【撮影:草町義和】

続いて北側には巨大な壁のような高層住宅が幾重にも並んでいるのが見える。ここにはかつて、汽車製造という鉄道車両メーカーの工場があった。現在は東京都住宅供給公社の南砂住宅となっており、1975年に完成。いちおうリニューアルされているようだが50年近くが過ぎており、建物の形状にどことなく懐かしさを覚える。

遊歩道に続いて現れた南砂住宅。ここもかつては汽車製造の工場で鉄道との縁がある。【撮影:草町義和】

さらに進んでいくと目の前に踏切が現れた。脇には「幹線3号踏切」と記されている。この線路はJR総武本線の貨物支線で「越中島支線」や「越中島貨物線」などと呼ばれている。ローカル線のような非電化単線だが、道路との交差は長さが30mあり、大量の遮断棒が天に向かって伸びていた。道路と線路の立体化が進んだ大都市部に、まだこんな踏切があるのかと思う。

越中島貨物線の幹線3号踏切。【撮影:草町義和】
線路は非電化単線。大量の遮断棒が天に向かって伸びている。【撮影:草町義和】

越中島貨物線は総武本線の小岩駅から亀戸駅付近を経て越中島貨物駅に至る11.7km。ただし一般的な貨物列車の営業運行は1997年までに終了している。終点の越中島貨物駅にはJR東日本のレール配送拠点があり、現在は製鉄所で製造されたレールを配送拠点に運ぶ列車や、配送拠点からレールの使用地までレールを輸送する列車などがときどき運行されているだけ。この踏切で渋滞が発生する回数は少ない。

幹線3号踏切を過ぎると永代通りは右にカーブを描き、カーブの途中に「南砂町駅 60m」の案内看板が現れる。その案内に従って永代通りから分かれる小道に入っていくと、南砂町駅の西側にある1番出入口が現れた。

幹線3号踏切を過ぎると永代通りはカーブを描く。【撮影:草町義和】
カーブの途中に「南砂町駅 60m」の看板が現れた。【撮影:草町義和】
南砂町駅西側の1番出入口。【撮影:草町義和】

南砂町駅→西葛西駅

南砂町駅の工事現場を脇に見ながら同駅の東側にある3番出入口に移動。ここから脇の公園を通り、再び永代通りに出て東へ進む。左にカーブして少しすると、東西線の高架橋とトラス桁が見えてきた。

南砂町駅の東側にある3番出入口。【撮影:草町義和】
再び永代通りを進む。【撮影:草町義和】
カーブの先で東西線の高架橋と荒川橋梁のトラス桁が見えた。【撮影:草町義和】

東西線は南砂町駅の先で地上に出て高架橋に入り、荒川橋梁へと入っていく。永代通りは荒川の手前で清砂大橋通りに名前を変え、その名の通り清砂大橋で荒川を渡る。

東西線の荒川橋梁(左)と清砂大橋通りの車道(右)に挟まれた歩道を進む。

清砂大橋は全長約547mの3径間連続鋼斜張橋で主塔の高さは最大55m。幅は20m以上あり、合計4車線の車道とその両脇の歩道で構成される。北側には東西線の荒川橋梁のトラス桁があり、トラス桁の頂上部を見下ろせるほどの高さ。ときどき通過する列車の屋根がよく見える。一方、南側は首都高速湾岸線と国道357号(東京湾岸道路)、そして京葉線のアーチを描いた荒川橋梁が見える。こちらの景色も悪くない。

清砂大橋は斜張橋。【撮影:草町義和】
清砂大橋の北側からは東西線の荒川橋梁を走る列車を見られる。【撮影:草町義和】
清砂大橋の南側には首都高速湾岸線・東京湾岸道路・京葉線の橋梁が見える。【撮影:草町義和】

ただ、橋の中間まで来ると風がかなり強く、何となくフワリと浮かぶような感覚を覚えて少し怖い。高所が苦手な人だと、ちょっとつらいかもしれない。

荒川を渡り切って頭上を横に通り抜ける首都高速道路中央環状線の下をくぐると中川で、中川も渡りきると歩道は下り坂に。清新1中北交差点の先で清砂大橋通りは右にカーブして東西線の高架橋から離れていく。

首都高速中央環状線をくぐる(写真奥は南砂町寄り)。【撮影:草町義和】
中川を渡りきると歩道は下り坂に。【撮影:草町義和】
清新1中北交差点で下道に合流。【撮影:草町義和】

東西線の両脇には側道が設けられているものの一段低い位置にあり、側道に直接入れる階段やスロープは見当たらない。私は東西線高架橋の北側にある街路に入り、途中で側道に合流。少しすると目の前に西葛西駅の高架ホームが見えてきた。

側道を少し歩くと西葛西駅の高架ホームが見えてきた。【撮影:草町義和】

代行バスより速い?

東京メトロは東西線の混雑緩和・遅延縮小策の一環として、南砂町駅でホームと線路の増設を伴う大規模改良工事を進めている。5月13日から新しいホームの使用を開始するのに先立ち、1回目の線路切替工事が5月10日終電後から5月13日始発まで行われる予定だ。このため5月11・12日の2日間、東陽町~南砂町~西葛西が終日運休し、代行バスが運行される。

東京メトロ東西線の運休区間(赤)とその周辺の地図。【画像:国土地理院地形図、加工:草町義和】

東京メトロによると、代行バスの運行時間は早朝の5時ごろから深夜の0時30分ごろまでで、おおむね5分(早朝・深夜)から10分(日中)の間隔で運行される。ただ、代行バスの乗車定員は60人と少なく、待ち時間を含めた乗車時間は30~40分ほどになる可能性がある。実際の乗車時間は東陽町~南砂町と南砂町~西葛西でそれぞれ約10分の見込みだが、これも道路状況によっては延びる可能性があるという。

代行バスの利用に際しては運休区間を含む乗車券が必要。南砂町駅では切符のみ購入可能で、支払い方法は現金のみになる。バス待ちだけでなく切符の購入にも時間がかかりそうだ。

こうしたことから東京メトロは「お身体の不自由な方や、ご高齢の方、小さなお子様連れの方などに(代行バスを)ご利用いただけるよう、可能な限り、徒歩移動と他の鉄道路線等によるう回にご理解ご協力をお願いいたします」と強く呼びかけている。できるだけ代行バスを使わないようにしたほうがよさそうだ。

南砂町駅に掲示されていた案内によると、同駅からの徒歩移動は東陽町駅までが約1kmで10~15分。西葛西駅までは約2.8kmで約35~40分としている。私はこれより時間がかかり、東陽町駅→南砂町駅は30分弱、南砂町駅→西葛西駅は50分ほどだったが、これは写真を撮りながらゆっくり歩いたため。東京メトロの想定通りなら、東陽町~南砂町は代行バスより徒歩のほうが速く移動できる可能性が高そうだし、南砂町~西葛西はやや微妙だが徒歩でも代行バスでも大きな差はないだろう。

東西線の西葛西駅。【撮影:草町義和】

「万人向け」ではないが、城東電軌の廃線跡や越中島支線の踏切など鉄道マニア向けのスポットがあるし、清砂大橋からの景色もいい。基本的にはほかの鉄道などで迂回したほうが効率的だが、運休を「口実」にして、ちょっとした散歩のつもりで歩いてみるのも悪くなさそうだ。

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