東京メトロは5月7日、大規模改良工事を実施中の東西線・南砂町駅で、同駅に整備した新しいホームなどを報道関係者に公開した。5月11・12日に1回目の線路切替工事を実施し、5月13日から使用開始の予定。ラッシュ時の混雑緩和や遅延時間の縮小を目指すプロジェクトは第2段階に移る。
地下2階は現行ホームの南側を掘削して島式ホーム1面が新設され、現行ホームと新設ホームを隔てるコンクリート構造物も一部が撤去された。このホームの南側は新しい線路が敷設されており、中野方面行きの列車が発着する。一方、新設ホームの北側は現在使用中の線路に隣接しているが、当面は列車の発着には使用しない。
新設ホームの幅は最終的には最大9m、最小6mになるが、工事のための仮組などがあるため当面の幅は狭くなる。ホームドアの設置時期は未定だ。
地下1階の新しいコンコースや改札口も公開された。改札口と改札内コンコースは新設ホーム中央の上に設置。自動改札機は7通路設けられる。改札内コンコースはバリアフリー対応のトイレが設置され、階段とエスカレーター、エレベーターで地下2階の新設ホームとつながる。
改札口から改札外の通路が東西に延び、当面は3カ所の地上出入口につながる。改札前の天井には天窓が設けられ、自然光を取り込んでいるのがユニークだ。新しい1番出入口の脇に駅事務室が整備された。
1回目の線路切替でどう変わる?
東京メトロは5月10日の終電後から5月13日の始発まで1回目の線路切替工事を実施。5月11・12日の2日間、南砂町駅を含む東陽町~西葛西を終日運休し、分岐器の設置に加え自動改札機・自動券売機の移設などを行う。5月13日の始発から新しい改札口や新設ホームなどの使用を開始する予定だ。
現行ホームは西船橋方面の列車のみ停車するようになり、現在の中野方面の列車が発着する線路や階段、エスカレーター、エレベーターは閉鎖される。このため、現行ホームと新設ホームをつなぐ仮設通路(幅3m)を当初は3カ所に設置。現行ホームから新設ホームの階段・エスカレーター・エレベーターを利用できるようにする。
改札口は今回新設される1カ所に集約され、現在の東西2カ所の改札口は廃止される。地上出入口は新しい1番出入口(西側)と4番出入口(中央やや西側)、5番出入口(中央やや東側)の使用を開始。現在の1番出入口(西側)は廃止され、2a・2b・3番出入口(東側)は使用休止になる。
東京メトロは5月13日以降も改良工事を引き続き進め、線路切替工事を2回実施する計画だ。2回目の切替工事後は現行ホームをいったん閉鎖して改修工事を実施。3回目の切替工事後、新設ホームと現行ホームで構成される島式ホーム2面3線に増強される。
工事の完了いつになる?
南砂町駅の利用者数(1日平均の乗車人員)は1990年代に1万6000~1万7000人台で推移していたが、周辺の住宅開発で2001年ごろから急速に増加。2013年度には乗車人員が1日3万人、乗降人員では6万人を超えた。現在はコロナ禍の影響で落ち込んでいるが、2022年度は乗降人員ベースで約5万4000人まで回復している。利用者の増加で島式ホームが1面しかない同駅の混雑が激しくなり、ラッシュ時の遅延時間も拡大した。
このため東京メトロは南砂町駅を島式ホーム2面3線に増強する大規模改良工事を計画。これによりホームの収容力を増強して混雑の緩和を図る。また、線路を1線増やすことにより、先行列車が遅れていても後続列車が入線できる交互発着を実現。これにより後続列車への遅延波及の防止を目指す。
工事は2012年に開始。このころに策定された東京メトログループの中期経営計画(2013~2015年度)では2020年度の完了予定としていた。東京メトロ改良建設部第一工事事務所の吉田敬所長によると、南砂町駅の一帯はかつて運河があった場所で地中に埋まっていた木材が想定より多く、さらに軟弱地盤の影響で工事が難航しているという。
2019~2021年度の中期経営計画では完了予定時期を2027年度に変更したが、その後の中期経営計画では完了予定時期を明示しておらず、今後の工期の精査でさらに延期される可能性もありそうだ。東京メトロによると、2回目と3回目の線路切替工事の時期も未定という。
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