東京メトロ東西線・南砂町駅「大規模改良」のいま ホームから見える工事の「気配」

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東京地下鉄(東京メトロ)東西線の南砂町駅(東京都江東区)。地下トンネル内にホームを一つ設けた典型的な地下鉄の駅だが、現在は大規模改良工事が進行中で、早ければ7年後にもホームが一つ増える。増設工事の様子は既設のホームからは見えないが、最近は壁の先で行われている工事の「気配」を感じ取れるようになってきた。

東京メトロ東西線の南砂町駅。トンネルの壁に大きな穴が開いている。穴の先にあるのは増設ホームのスペースだ。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

南砂町駅は島式ホーム1面2線の構造。東西線の列車に乗って南砂町駅のホームに降り立つと、2番線(南側、中野方面)の脇にあるトンネル壁が一部、グレーの鉄板で覆われているのが見える。この壁の先でホームの増設工事が行われており、最終的には壁を取り払うことになるが、壁の撤去時に粉じんが飛び散らないよう、仮設の防護壁が設置されたのだ。

グレーの鉄板(防護壁)がトンネルの壁の一部に設置されている。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

壁が露出している部分を見ると、大きな四角い穴が一つ、開いていた。穴の先は鉄板で覆われていて見えない。壁の撤去工事はまだ本格化していないが、試験的に一部分だけ穴を開けたのだろう。

現在のホームと増設ホームを遮るトンネル壁に開けられた穴。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

階段を上がって改札を抜け、駅の南側に出る通路へ向かう。天井を見ると、地下トンネルのコンクリート構造物を切断したような痕跡が見えた。既設の地下構造物に手を加える場合、周囲の土砂から受ける力の加減が変化するため、慎重な作業が求められる。まっさらな状態から新線を建設するのとは異なる難しさが感じられた。

地下の改札口と地上を結ぶ通路の途中。天井に既存のコンクリート構造物を切断したような痕跡がある。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

地上に出ると、多数の建設資材が置かれたヤードが目の前に広がっていた。地下駅の上を通っている道路には仮設の鉄板(覆工板)が敷かれていて、その上を歩くとわずかに揺れる。道路の西側を見てみると、ホームが増設される部分はかなり下まで掘り込まれていて、コンコース階の床らしきコンクリートも見えた。

南砂町駅の上に広がる工事ヤード。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
道路から増設ホームの地下スペースが見えた。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

■「交互発着」で混雑緩和

東西線の混雑率は、国内最悪の199%(2018年度)。これまでも車両の増結やドア幅の広い車両の導入、高機能な保安装置の導入による増発(運転間隔の短縮)などの混雑緩和策が行われてきた。しかし、沿線の再開発などで利用者が増え、従来の方法では混雑緩和が難しくなってきた。

混雑率が国内最悪の東京メトロ東西線。【撮影:草町義和】

そこで東京メトロは、混雑緩和のための新たな大規模改良プロジェクトの実施を決定。その一つが南砂町駅のホーム増設計画だ。

南砂町駅は半世紀以上前の1969年3月29日、東西線の全通と同時に開業。島式ホーム1面2線の構造で整備された。1日平均乗車人員は1970年度が約7900人。1990年代でも1万6000~1万7000人台で、東西線内の駅では利用者が最も少ない駅だった。ところが、2000年代に入ると周辺の住宅開発が進み、駅の利用者も急速に増加。2018年度には約3万500人に達した。

現在のホームは島式1面のみ。幅も狭い。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

このため、島式ホームが一つだけという構造があだになり、狭いホームの混雑が激化。利用者の乗り降りに時間がかかるようになった。とくに朝ラッシュ時は駅での停車時間が長くなり、後続の列車は駅の直前でいったん停車しなければならない。こうして遅れがどんどん波及し、混雑がさらに激しくなるという悪循環を生んでいる。

そこで、現在のホームの幅を広げるほか、南側に島式ホームを1面増設して2面3線にすることが考えられた。これにより、列車がまだホームにいる状態でも後続の列車が駅に入れるようになり、列車の本数を減らさずに停車時間を長くすることができるようになる。

南砂町駅の大規模改良計画。ホームを増やして「交互発着」に対応する。【画像:東京メトロ】

ただ、後続の列車が先行列車に追いつくと、先を急ぐ人が後続列車から先行列車に乗り換えようとするため、かえって混乱してしまう。そこで、先行列車が発車した直後くらいに後続列車が駅のホームに入るよう運用する。このような運転方式を「交互発着」という。

■工事は難航、さらに別の問題が

工事は2013年に始まったが、難航している。事業計画に盛り込まれた2011年度時点では2018年度以降の完成の見通しだったが、もともと南砂町駅周辺は軟弱の地盤。これに加えて地中には工事の障害となるものが多数埋まっており、工事は遅れ気味だ。着工後の2014年度時点では2020年度完成予定に。2019年3月にまとめられた中期経営計画では、2027年度の使用開始予定とされた。

また、ここに来て新型コロナウイルスの感染拡大による利用者の減少という、別の問題が生じている。利用者が減れば、南砂町駅のホームを増設しなくても、遅延の発生頻度や時間が縮小する可能性がある。

いまのコロナ禍が収まれば利用者数も元に戻り、南砂町駅のホーム増設はやはり必要だった、ということになるかもしれない。ただ、JR東日本は今年2020年9月3日、終電時刻の繰り上げに関する発表のなかで「感染が終息した後も、テレワークやEコーマースなどはさらに広く社会に浸透していくことが想定され、お客さまの働き方や、行動様式も、元に戻ることはないと考えています」と述べている。

「コロナ後」のラッシュ時の混雑率が「コロナ前」と同じ水準に戻らなかった場合、東京メトロが南砂町駅のホーム増設計画に関して何らかの判断を下すことになるのかどうか、注目されるところだ。

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