多摩モノレール「昭和の8の字構想」まだ生きている あきる野延伸の見通しは?



東京都が40年以上前に策定した多摩地域のモノレールの構想路線について、都は現在も生きた構想であるとの認識を3月20日までに示した。その一方、国の審議会の答申に盛り込まれていない路線の早期実現には消極的な考えを示した。

多摩モノレールの列車。【撮影:草町義和】

東京都は「多摩都市モノレールの8の字構想と言われている計画は昭和の時代に構想が立てられ、その構想がいまもあるのは事実」と回答。構想を引き続き維持しているとの認識を明らかにした。

東京都は1981年、全長93kmに及ぶ8の字状のモノレール網を多摩地域に整備する構想を発表。このうち上北台~立川北~多摩センターの16.0kmが1998年から2000年にかけ、第三セクターの多摩都市モノレールが運営する路線(多摩モノレール)として開業した。

このほか、国土交通大臣の交通政策審議会が2016年に策定した『東京圏における今後の都市鉄道のあり方について』(交政審198号答申)で、上北台~箱根ヶ崎・多摩センター~八王子・多摩センター~町田の3区間が盛り込まれている。

これを受けて東京都は上北台~箱根ヶ崎の事業化を決め、現在は導入空間となる道路の拡張工事や都市計画の手続きを推進。多摩センター~町田も整備ルートが決定するなど検討が本格化している。その一方、箱根ヶ崎~あきる野~八王子など交政審198号答申に盛り込まれなかった区間は、具体化の見通しが立っていない。

多摩モノレールの構想路線。上北台~箱根ヶ崎(青)は事業着手に向けた手続きが進められており、交政審の答申に盛り込まれた路線(赤)のうち多摩センター~町田の検討も進んでいる。答申に盛り込まれていない路線(ピンク)は事業化のめどが立っていない。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

箱根ヶ崎からあきる野方面への延伸について、東京都は「交政審198号答申には位置付けられていない状況。移動時間の短縮などの効果が見込まれる一方で収支採算性や費用対効果、公共事業・鉄道事業として成立するための諸要件について、検討すべきさまざまな課題がある」と回答。「課題を解決するためには、まず地元の市町が需要創出につながる沿線のまちづくりなどの検討を進めることが非常に重要」と述べ、沿線のまちづくりが進まない限り具体化に向け動くことはないとの考えを示唆した。

現在、事業着手に向けた準備が本格化している上北台~箱根ヶ崎の区間のうち、終点のNo.7駅(仮称、JR八高線・箱根ケ崎駅付近)は、米軍横田基地の航空制限区域になるため高さを抑えて整備する計画だ。1層式を採用してホーム・軌道の末端寄りに駅舎を設ける構造が想定されている。このため延伸が困難な構造になる。

JR八高線の箱根ケ崎駅近くに設けられるNo.7駅のイメージ。ホーム・軌道の末端に駅舎を整備することが想定されており、延伸が困難な構造だ。【画像:東京都】

東京都は「駅を改良しながら、かつ横田基地の航空制限を回避できる場所からあきる野方面に延伸することは可能だ」と話し、あきる野方面に延伸する場合は駅を改良しなければならないとの認識を示した。

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