黒部峡谷鉄道の全線開通「2024年10月」黒部ルート開放も延期 地震で橋梁が損傷



黒部峡谷鉄道(富山県)は3月7日、今年2024年シーズンは4月20日ごろから観光トロッコ列車の営業運行を一部区間で開始すると発表した。地震の影響で施設が損傷したことを受け、全線の営業運行開始は大幅に遅れて10月ごろの見込み。黒部ルートの一般開放も延期される。

黒部峡谷鉄道のトロッコ列車。【画像:フォトデイリー/写真AC】

黒部峡谷鉄道は昨年2023年12月、2024年シーズンの運行計画を発表。4月20日に宇奈月~笹平で営業運行を開始して5月1日には営業区間を宇奈月~鐘釣に拡大し、5月10日から宇奈月~欅平の全線で営業運行を開始するとしていた。

今回の発表では地震による施設の損傷と復旧工事を踏まえ、宇奈月~欅平の全線開通は例年より5カ月ほど遅い10月1日ごろを目指すとした。それまでは一部区間の宇奈月~猫又で営業運行する。一部区間の営業運行開始は4月20日ごろの予定。実際の開始日は積雪状況を踏まえて3月下旬に発表するとしている。

黒部峡谷鉄道の2024年シーズンの運行開始スケジュール。【画像:OpenRailwayMap/OpenStreetMap、加工:鉄道プレスネット】

黒部峡谷鉄道は黒部川沿いの宇奈月~欅平20.1kmを結ぶ鉄道を運営。関西電力の黒部ダム・発電所向けの資材輸送に加え、観光トロッコ列車を運行している。観光トロッコ列車は通常、4月に一部区間で運行を開始して5月から全線の運行を開始。11月まで運行して12月から翌年4月までは運休している。

冬季運休中の1月に発生した能登半島地震の影響で沿線の東鐘釣山から落石があり、宇奈月駅から約14kmの地点にある鐘釣橋(約86m)が損傷した。黒部峡谷鉄道によると、これまでの現地調査などを踏まえて雪解け後に東鐘釣山の落石防止対策を実施。その後、鐘釣橋の復旧工事に着手するという。このため全線運行開始の時期が例年より5カ月ほど遅れる。

一方、終点の欅平駅から黒部ダムまでは、専用鉄道や道路トンネルで構成される関西電力の資材輸送ルート(黒部ルート)が設けられている。業務用のため一般には開放されていなかったが、6月30日から「黒部宇奈月キャニオンルート」として旅行商品による一般開放が始まる予定だった。

黒部ルートの専用鉄道。【撮影:草町義和】

黒部宇奈月キャニオンルートは黒部峡谷鉄道が全線で運行されないとアクセスできない。このため富山県も黒部峡谷鉄道の発表を受け、黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放を延期すると発表。黒部峡谷鉄道の全線開通にあわせ10月1日ごろに開始するとした。旅行商品の販売は7月上旬までに開始する予定だ。

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