横浜シーサイドライン「上瀬谷ライン」参画せず 横浜市の三セクが市の要請を拒否



横浜シーサイドラインは11月26日、横浜市から要請されていた自動案内軌条式旅客輸送システム(新交通システム、AGT)の新線「上瀬谷ライン(仮称)」への事業参画について、同市に「現時点では軌道事業者として参画はしない」と回答したと発表した。

花博会場・テーマパークの整備が構想されている旧上瀬谷通信施設地区と上瀬谷ラインの事業参画を拒否した横浜シーサイドラインの列車(左上)。【撮影・加工:草町義和】

回答は11月25日付け。横浜市が示した需要予測などが横浜シーサイドラインの認識と大きく乖離(かいり)しており、採算性や継続性が見込めないとして参画しないことにしたという。

上瀬谷ラインは相鉄本線の瀬谷駅付近と米軍の通信施設跡地(旧上瀬谷通信施設地区)を結ぶ約2.6kmの新線。ゴムタイヤの車両が専用の通路を走るAGT方式で整備することが考えられている。旧上瀬谷通信施設地区は2027年の国際園芸博覧会(花博)の会場になることが決まっており、開催後はテーマパークを中心とした再開発が行われる計画。これを受けて上瀬谷ラインの整備が浮上した。

上瀬谷ラインのルート。【画像:横浜市】

横浜市は当初、2020年度中に上瀬谷ラインを運営する軌道事業者を決めて軌道法に基づく特許を申請する計画だったが、事業者が決まらず特許申請も延期された。今年2021年9月、横浜市は新杉田~金沢八景間のAGT路線(金沢シーサイドライン)を運営する横浜シーサイドラインに事業参画を依頼。同社は外部有識者を交えた検討会議を設置し、事業参画の可否を検討していた。

横浜シーサイドラインは回答書のなかで、「テーマパークの事業主体や具体的な事業内容が未定で、横浜市から提示された来園者数の予測値や交通分担率などが大きく変動する可能性がある」「具体的な延伸計画が示されていないことから、将来に渡りテーマパークに依存した路線となる」などの懸念材料を列挙。リスク回避策が示されないまま参画して新型コロナの再拡大やテーマパーク事業の撤退などのリスクが発生すると、金沢シーサイドラインの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があるとしている。

横浜シーサイドラインは横浜市が6割以上の株式を保有する第三セクター。最大株主である市の要請を拒否するという、異例の事態となった。

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