横浜「上瀬谷ライン」特許申請は来年度に 残り6年「花博に間に合うよう全力」



横浜市は2月15日、相模鉄道(相鉄)本線の瀬谷駅付近と2027年横浜国際園芸博覧会(花博)の会場となる上瀬谷地区を結ぶ新線「上瀬谷ライン(仮称)」について、軌道法に基づく特許の申請時期を来年度2021年度に変更することを明らかにした。本年度2020年度中に申請する計画だったが、1年遅れる。

上瀬谷ラインに導入される新交通システムのイメージ(写真は横浜シーサイドライン)。【撮影:草町義和】

同日行われた市議会の建築・都市整備・道路委員会で横浜市が報告した。同市によると、本年度中に実施する予定だった都市計画案や環境影響評価準備書の公告・縦覧、軌道特許の申請などについて、関係機関との協議などに時間がかかっているとし、来年度に変更するという。

平原敏英副市長は「設計・計画の作業が詰まってくると、たとえば瀬谷の駅前のどこに入れていこうかなど、現場に即した課題もだんだん見えてきた。そのため若干遅れている」としつつ、「とにかく(花博の開催に)間に合うよう全力を尽くす」とした。

上瀬谷ラインはゴムタイヤで専用の軌道を通る新交通システム(AGT)を採用。全長約2.6kmで、瀬谷駅付近寄りの約1.9kmは地下トンネル、上瀬谷寄りの約0.7kmは地上を通る計画だ。

上瀬谷地区には2015年に米軍から返還された「旧上瀬谷通信施設地区」(約240ha)があり、横浜市は同地区の敷地を活用してテーマパークを核とした観光施設や物流施設、公園、都市農業施設を整備することを構想。2027年に花博をこの地区で開催することも決まっており、花博の来場者輸送と花博終了後の開発構想に対応するため、上瀬谷ラインの計画が浮上した。

上瀬谷ラインの平面図と縦断面図。【画像:横浜市】
米軍から返還された旧上瀬谷通信施設地区。【撮影:草町義和】

新交通システムは多くの場合、道路と一体的に整備されるため、路面電車の法律である軌道法に基づき建設、運営されることが多い。軌道法では開業後の運営を担う事業者が営業区間などを定めた特許(鉄道事業法に基づく許可に相当)を受け、それに続いて工事計画を定めた工事施行認可を受けて着工の段取りになる。

横浜市は運営事業者について「事業スキームという形で基本設計のなかで検討している。そういったものができあがり、事業採算性を考慮して事業者が確定して特許申請という形になるため、年度内の特許申請は難しい」とし、現時点では特許を申請する運営事業者自体が確定していないことを明らかにした。特許の手続きが遅れれば着工も遅れる可能性が高く、6年後の花博開催までに整備できるかどうか、微妙な情勢だ。