東北新幹線・上野~大宮「停電トラブル」重り支える棒を緊急点検、対策は



JR東日本は1月30日、東北新幹線で発生した架線故障による停電トラブルを受けて実施した緊急点検の結果や再発防止策を発表した。同社は「多くのお客さまに、ご迷惑とご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

架線が垂れ下がった東北新幹線・上野~大宮の線路(埼京線・北与野駅付近)。【画像:JR東日本】

トラブルは1月23日9時58分、東北新幹線・上野~大宮(並行する埼京線の与野本町~北与野、さいたま市中央区)で発生。架線故障により東北新幹線の東京~仙台と上越・北陸新幹線の東京~高崎で上下線の運転を終日見合わせ、翌1月24日の始発から全線の運転を再開した。

架線故障が発生した位置。【画像:JR東日本】

JR東日本が現地確認を実施したところ、上野~大宮の上り線で架線が垂れ下がっており、架線の張力を調整する滑車式の自動張力調整装置(WTB)の重りを支える棒(重錘ロッド)が破断。車両のパンタグラフも損傷していた。

トラブル当日の設備の損傷状況。【画像:JR東日本】

JR東日本は重錘ロッドの破断で垂れ下がった架線の下を列車が通過したことで、車両のパンタグラフと架線金具が損傷。架線からの異常な電気を検知して停電になったと推定している。破断した重錘ロッドは38年前の1985年、上野~大宮の開業時から交換されていなかった。

設備損傷のメカニズム(JR東日本の推定)。【画像:JR東日本】

これを受けてJR東日本は1月30日早朝までに緊急点検を実施。車両基地を含む同社の新幹線全線でWTBの重錘ロッド(490カ所)の全周を目視でチェックし、ひび割れがないかどうかを調べた。その結果、異常はなかったという。

現在は車両基地を除く393カ所を対象に追加検査を6月末まで行うする計画で、検査液を使った非破壊検査を実施中。東京~大宮の7カ所は1月30日早朝までに点検が完了し、異常がないことを確認済みという。

再発防止対策は暫定対策として、東京~大宮の7カ所にある重錘ロッドを3月末までに取り替える。また、車両センターを除く新幹線全線の394カ所で7月末までに重錘の落下を防止するための金具を取り付ける。

このほか、ばね式の自動張力調整装置(STB)への取替を恒久対策として推進。車両基地を含む新幹線全線の約440カ所で順次取り換える。

JR東日本が計画している暫定対策。【画像:JR東日本】
WTBとSTBの違い。【画像:JR東日本】

滑車式のWTBは部品点数が多く、ワイヤーの取替が8年で1回必要。検査時に測定する場所も多い。これに対してSTBは張力を調整できる距離は短いものの、構造が単純でメンテナンスが容易。検査時に測定する場所も少ないという。

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