黒部峡谷鉄道のトロッコ列車「25%値上げ」特別車両や貨物運賃も



黒部峡谷鉄道(富山県)は10月10日、鉄道事業の旅客運賃上限変更認可を国土交通省の北陸信越運輸局長に申請した。認可された場合、来年2024年シーズンから値上げされる見込み。平均値上率は25.2%。

トロッコ列車を運行している黒部峡谷鉄道。【撮影:草町義和】

普通旅客運賃の上限は初乗り(2kmまで)が現行180円のところ50円値上げの230円に。宇奈月~鐘釣14.3kmは現行1410円のところ370円値上げの1780円、宇奈月~欅平20.1kmは現行1980円から500円値上げして2480円になる。定期旅客運賃の上限(1カ月)は3kmまでが1620円値上げの8400円。宇奈月~欅平は1万2100円値上げの5万9520円。

普通旅客運賃(上限ベース)の申請額と現行額。【画像:黒部峡谷鉄道/国土交通省】
定期旅客運賃(上限ベース)の申請額と現行額。【画像:黒部峡谷鉄道/国土交通省】

黒部峡谷鉄道は旅客運賃の改定にあわせて特別車両の料金なども改定する考え。「特別車両(A)料金」(現行370円)は廃止し、「特別車両(R)料金(リラックス車両)」(現行530円)は「特別車両料金(リラックス車両)」として70円値上げの600円とする。このほか、貨物運賃は1区間1トンあたりで現行3000円のところ800円値上げの3800円に。ほかにも入場料金や払戻手数料などを値上げする。

黒部峡谷鉄道は黒部川の峡谷沿いに敷設された鉄道を運営。沿線のダムや発電所に資材を運ぶ貨物列車や、観光客向けのトロッコ列車を運行している。終点の欅平駅では関西電力の物資輸送ルート(黒部ルート)に接続。同ルートは2024年6月から「黒部宇奈月キャニオンルート」として一般開放・旅行商品化が実施されることが決まっている。

黒部峡谷鉄道は5年前の2018年にも運賃の改定を実施している。今回の申請によると、観光客数は2018年の改定時に想定した数を下回って推移。さらにコロナ禍の影響で観光客が大幅に減少し、鉄道事業は2020年以降の3年間で累計18億円を超える損失を計上した。

一方で老朽化対策として設備更新や保守・点検などの充実に取り組んでおり、とくに橋梁は今後3年間で2億円以上の費用を見込む。予約・発見システムも導入から20年あまりが経過し、サーバーサポートが2025年で切れることから、システムのリプレースに向けての支出・投資が必要になっている。これらに加えて昨今の物価上昇で運営コストが増加しているため、運賃改定を申請したという。

《関連記事》
「黒部宇奈月キャニオンルート」鉄道法規上の扱いは? 一般開放に向け準備進む
黒部宇奈月キャニオンルート「2024年6月30日」一般開放 1日最大4便