特急「やくも」新型273系に「ちょっとした遊び」案内表示で列車の歴史を再現



岡山~出雲市を結ぶJR西日本の陰陽連絡特急「やくも」に新型車両「273系」が導入されることになり、完成した車両の報道公開が10月17日に行われた。その際、鉄道マニア向けの「ちょっとした遊び」も実演披露された。

特急「やくも」向けに新造された273系。【撮影:草町義和】

「遊び」は車体側面に設置された、フルカラーLEDの案内表示装置。ここには列車名や行き先、号車番号などが表示されるが、列車名の部分は歴代「やくも」のヘッドマークも表示できるようにした。「やくも」の歴史を再現したといえる。

実演では、まず273系の先頭部デザインを表示。続いて「おかえりなさい」という言葉が表示された。

273系の車体側面に設置された案内装置。列車名や行き先が表示されている。【撮影:草町義和】
「おかえりなさい」の表示。【撮影:草町義和】

そして三つ目の表示は、白地に「やくも」「YAKUMO」の文字。これは「やくも」の1972年のデビュー時に使われていたキハ181系気動車のヘッドマークを模したものだ。

キハ181系のヘッドマークと同じデザインで「やくも」「YAKUMO」と表示。【撮影:草町義和】

そして最後に表示されたのが、1982年に気動車から現在の381系電車が変わったときから使われるようになったイラスト入りのヘッドマーク。高頻度・等間隔運行で自由席付きの特急列車を意味する「エル特急」のロゴマークも追加されている。

381系「やくも」のイラスト入りヘッドマークも表示。【撮影:草町義和】

現在の「やくも」は国鉄時代の1972年、山陽新幹線・新大阪~岡山の開業時にデビュー。東海道・山陽新幹線の連絡特急として岡山~出雲市・益田を伯備線経由で結び、車両はキハ181系を使用した。名称は出雲の枕ことば「八雲立つ」に由来する。

このときのヘッドマークは白地にひらがな表記とローマ字表記の列車名を記しただけで、イラストは入っていなかった。

キハ181系を使用していたころの「やくも」。ヘッドマークは文字だけだった。【画像:Spaceaero2/wikimedia.org/CC BY-SA 3.0】

定期列車の運行本数は1日4往復だったが、1973年には6往復に増強。1975年からはエル特急に指定された。1978年には国鉄の電車特急にイラスト入りヘッドマークが掲出されるようになったが、気動車特急「やくも」のヘッドマークは従来のままだった。

1982年、伯備線の全線と山陰本線・伯耆大山~知井宮(現在の西出雲)が電化。「やくも」の運行区間は電化の範囲内になる岡山~出雲市に縮小された一方、車両はキハ181系から381系に変わった。

このときから、ほかの国鉄電車特急と同様、「八雲立つ」をイメージした現在のイラスト入りヘッドマークが掲出されるようになった。ちなみに2010年には「やくも」はエル特急ではなくなったが、ヘッドマークには現在もエル特急のロゴマークが描かれている。

車両が381系に変わってからの「やくも」。ヘッドマークがイラスト入りになった。【画像:JR西日本】

273系は来年2024年春以降、「やくも」に順次導入される予定だ。

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