南海電鉄「係員付き自動運転」まもなく和歌山港線で試験開始 他線への導入も目指す



南海電鉄と京三製作所の2社は6月13日、自動運転レベル「GoA2.5」(係員付き自動運転)の走行試験を8月頃から始めると発表した。生産年齢人口の減少による労働力不足の社会課題解決などを目指し、一部の路線での自動運転の実現を目指す。

南海電鉄の8300系。写真は4両編成だが自動運転の走行試験では2両編成の8300系を使う。【撮影:草町義和】

走行試験は和歌山港線・和歌山市~和歌山港の2.8kmで実施。8300系電車の2両編成を使用する。運転士が乗務した状態で実施し、昼間と夜間に試験を行うが、客が乗る列車では走行試験は行わない。

この試験では、南海電鉄が使用している自動列車停止装置(ATS-PN)と、2社が共同開発した高機能型の自動列車運転装置(高機能ATO)を組み合わせた自動運転システムの安全性を確認。運転士が運転する場合と同等の目標速度への加速・減速、停止精度なども確認する。

2社は試験結果を踏まえ、有識者で構成される「GoA2.5自動運転検討委員会」で安全性評価を得たのち、自動運転の実現に向け検討する考えだ。導入路線は和歌山港線のほか高師浜線への導入も考えられている。

南海電鉄は昨年2022年6月、GoA2.5の実証試験を2023年度に和歌山港線で実施すると発表。2022年7月から実証試験に向けた準備を進めていた。車両の高機能ATOに信号機の設置位置や勾配、停止位置などを記憶させておく必要があることから、地上設備などの測量を実施してデータを作成。車両に高機能ATOなどを設置したほか、地上側でも運行に必要な情報を車両のATOに送信する機能を付加したATS-PNを新設した。

これまで進めてきた自動運転走行試験の準備。【画像:南海電鉄・京三製作所】

GoA2.5は、運転士ではない係員が先頭車両の運転台に乗務。基本的には自動運転で列車を走らせるが、トラブル発生時などでは係員が緊急停止操作や乗客の避難誘導を行う。線路内に人や自動車が無断で進入するなど不意のトラブルに対応しやすく、踏切が多い既設路線などでも低コストで自動運転を導入できる。また、係員は必ずしも運転士と同等の技能を持つ必要がないため、養成コストの削減や養成期間の短縮などの効果も期待される。

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