宗谷本線・抜海駅「維持難しい」稚内市長が表明 日本最北の無人駅、来春にも廃止か



北海道稚内市の工藤広市長は6月21日、JR宗谷本線・抜海駅の維持管理を中止する考えを明らかにした。早ければ来年2023年春にも廃止される可能性が高まった。

宗谷本線の抜海駅。【画像:オホーツク/写真AC】

市議会本会議で質問に答えた。工藤市長は「イベントの開催など地域の取組によって、地域住民の利用のみならず観光客の利用促進にも務めていただいていることは評価したい」としつつ、「廃駅の基準として示された乗降者数に大きな変化が見られない。今後の市の負担による抜海駅の維持管理は難しいという判断に至った」と答弁した。

駅の廃止後については「少しでも地域にとって利便性の高い交通手段を確保できるよう取り組んでいきたい」とし、スクールバス混乗や乗合タクシーの活用で地元の足を確保する方針だ。

抜海駅の位置。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット】

抜海駅は1924年に開業。国鉄時代の1984年に無人化された。稚内市内には宗谷本線の鉄道駅として南から勇知・抜海・南稚内・稚内の4駅あるが、南稚内駅と日本最北端の稚内駅は駅員がいる有人駅.。抜海駅は無人駅としては国内で最も北に位置する。木造駅舎が残る駅としても日本最北だ。

もともと地域人口が少なく、抜海地域の中心部からは2kmほど離れていることもあって利用者は少ない。JR北海道の資料によると、乗車人員(2016~2020年)は1日平均で3人以下。稚内市の2021年の調査では1日平均2.3人だった。一方で「日本最北の秘境駅」として人気があり、映画『南極物語』(1983年)やテレビドラマ『少女に何が起ったか』(1985年)などのロケ地としても知られる。

JR北海道は2019年、抜海駅について廃止か自治体管理駅に移行する方針を示し、2021年4月から稚内市が維持、管理する駅に移行。同市は2021年度から年間約100万円の維持費を計上している。今年2022年6月7日、稚内市は地元町内会に対し本年度2022年度で維持を終了する方針を伝えていた。地元では議論不足などとして反発する声が上がっている。

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